グローバル人材って誰?英語の迷信に振り回されるな!

2012.6. 1  4151Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




「TOEICをやらなくちゃ」と思うのだけど




週刊 東洋経済 2012年 6/2号 [雑誌] 』が話題になっています。
特集は「脱TOEICの英語術」です。気になるタイトルですよね。



グローバル化、グローバル人材という言葉が広がっています。


採用や、昇進・昇格、異動などにおいて、ある程度のTOEICのスコアが求められる企業も増えました。
社内公用語を英語にする企業も現れています。
こんな流れもあり、皆さんもなんとなく「英語を勉強しなくちゃ」「TOEICのスコアを上げなくちゃ」と思っているのではないでしょうか。


この特集では、みんなが気になるTOEICについて、本当に意味があるのか、役に立つのかを検証しています。
名前は出ていませんが、私も少しだけ協力しています。
ぜひ、ご覧ください。


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仕事で必要な英語力って何?




私の中での素朴な疑問は、「グローバル人材って誰?」「グローバル化する時代に本当に必要な力とは何か?」ということです。


実はこう見えて、大学時代の専攻は国際マーケティング戦略で、多国籍企業のグローバル展開事例を当時から相当研究していたのですが、その立場から言わせると、やや意地悪な言い方をすれば、いくつかのニュースについては明らかに煽り気味ではないかと感じてしまうわけです。
そんな疑問を、様々な方にぶつけていたのですが、やはり皆さん同様の問題意識をお持ちでした。


興味深いのは、私の意見に賛同してくれる方は、外資系企業勤務の方、海外駐在経験のある方、英語教育や留学制度が充実している企業の方なのです。
彼らも、昨今の「グローバル人材推し」「TOEIC推し」に関する疑問を持っていたのでした。


今日はその中でも英語力に関する話をしましょう。




企業で求められる英語力とは何なのでしょうか?


社会に出てからずっと外資系企業を数社渡り歩き、現在は外資系IT企業のシニアマネジャーの女性はこう語ります。


「まず、英語しかできない人は要らない」


なるほど。よくわかります。
採用担当者をしていた頃も、そして今も、特に女子大生に多いパターンなのですが、「英語を活かした仕事をしたい」と言っているタイプ、こういう方々は危険なのですね。
英語を使うだけという仕事はなかなかありません。
よっぽどできないと意味がないです。


ちなみに、「英語力を活かしたい」と自分から言う人の英語力は、そこそこです。
TOEIC600点台の学生が、「この企業に、私の英語力が活かせるような仕事はあるんでしょうか?」とアピールしていた様子をみて、「痛いなあ」と思ったことがありました。
TOEIC600点台...。
日本人の平均点からいって決して低いスコアではないですが、別に自慢できるスコアではないですよ。


では、仕事で英語を使うのはどんな場面なのでしょうか?


大手電機メーカーでの国内勤務、海外勤務、グローバルIT企業の米国法人を経て現在、外資系部品メーカーに勤める男性から話を聞きました。
日系も外資も経験し、それぞれ日本国内も、海外も勤務経験があるわけですね。
さらには留学も経験しています。
そんな彼から、日系×外資、日本国内×海外の時期、この軸での4パターンで、それぞれ英語をどんなシーンでどれだけ使ったのかを円グラフで教えてくれました。
海外勤務の場合はたしかに英語で会話するシーンも多かったようですが、実はすべてのパターンにおいて多かったのは、英語でのメールのやり取り、英語の資料を読むことでした。
ビジネスをする上では文書でのコミュニケーションというものがあり、これを正確に行うことが求められます。
もちろん、電話やTV電話などで英語を話すシーンはあるのですが、彼は「むしろ、読み書きが大切」と語っていました。


英会話だけではダメというわけですね。


彼に言わせると、これを確実に行うためには、まず日本語の文書の読み書きが大事とのことでした。
英語だけではダメだというわけですね。
彼によると当たり前の日本語力がない若者が増えていると感じるとのこと。
普段の日本語の読み・書き・聞く・話すも意識して行なって行きたいところですね。


さらに、英語は、ただTOEICの点数がよければいいというわけではありません。
前出の外資系IT企業のシニアマネジャーの女性は「美しい英語、日本語が使えることが大事」だと語っていました。
そう、海外経験が長く、英会話はばっちりという方がいますが、意外に英語が汚かったりするのですよね。
それでは信用を失ってしまいます。
美しい言葉、使いたいですね。
改めて、求められる力のウソと本当に気づいた次第です。






いかがでしたか?


なお、グローバル人材ネタは今後も様々な切り口でお届けする予定です。
また、来週月曜日には早稲田大学でグローバル人材ネタの講演も実施します。
他大生も参加可能なので、ぜひ!


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。