愛と幻想のノマド論 食いっぱぐれない働き方のぶっちゃけ話

2012.3.21  16872Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


突然ステマ的な告知ですが、3月30日(金)の深夜、TBSで放送予定の「田村総研」という番組に出演することになりました。
すでに昨日、収録は終了しました。
ロンブーの田村淳さんが所長を務める研究所という設定で、ファシリテーター役に今をときめく荻上チキさんも出演しています。


私は「若者の雇用」をテーマにしたパートで、本田由紀先生、萱野稔人先生、安藤美冬さんと議論しました。
なんせ、60分という短い時間ですし、語り尽くせなかったという感じではありますが、言い訳してもしょうがありません。
人前で話すのが苦手でシャイで口下手な私ですが、頑張りましたので放送をお楽しみに。


ちなみに、私は過去に広報担当者をしていた経験から、この手の出演情報などは直前まで発表しない方針なのですが、番組のTwitterアカウントが明らかにしていたので、お知らせすることにしましょう。
ベンチャービジネスの社長や、若手論客(と言われている人たち)をみるとこの辺がゆるくなっているなぁとか、広報対応が素人だなあと感じることがよくあるのですが、一方でメディアに気を使ってしまう私はやっぱり所詮サラリーマン魂が刷り込まれているアラフォー中年親父なのかなと思ったりもします。





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何年かに一度盛り上がる新ワークスタイル論




もちろん放送の中身は当日まで内緒なのですが...。
議論の中で、ノマドなどを始めとする、新しい働き方の話が話題になりました。
学生の間でも話題になっていますね。
今週のAERAでも本田直之氏他による座談会が掲載されていました。


私、ノマド批判論者だと思われているのですが、実は違います。
むしろ、期待しています。
ただ、現状の盛り上がり方、取り組み方が残念だと感じています。
また、このムーブメントが若者の間に希望難民を生み出すだけではないかという曖昧な不安があるのです。
今日はこのことについて考えてみましょう。


アラフォー中年親父のぶっちゃけ話として聞いて頂きたいのですが、この手の新しいワークスタイル(もっと広げてライフスタイル)というものは、いつの時代も論じられるわけですよ。
私は直球で就職氷河期世代なわけですが、当時も「日本の大企業はもうダメだ」「新しい働き方が必要」という話は盛り上がりましたし、学生も外資系企業やベンチャー企業を視野に入れたりしました。
また、学生企業なども盛り上がりました。
00年代になる頃にもフリーランスブームがありました。
同じタイミングで、人材派遣が盛り上がりをみせ、80年代後半のフリータームーブメメントのように、03年にはフリーの業務請負人であるインディペンデントコンストラクターという働き方が注目を集めました。
ソーシャルネットワークでゆるくつながりコラボするという流れが出てきたのも00年代半ばです。


他にも働き方、もっと言うと生き方に関する新スタイルは何度も登場しては、定着したり、消えたりしました。


どうでしょう?
最近、聞く話と重なっていると思いませんか?


特に先行きが不透明な時代になると、新しいやり方を模索するのは人間がいつも取り組むことなのです。




ビジネスの本質はあまり変わらない




もちろん、こんな反論もあるでしょう。


「今と昔では時代が違う」
おっしゃるとおりです。
そう、これらを理解する上では前提となる環境や条件の変化を把握するべきですね。
特に働き方においては、企業活動の変化、雇用形態の変化、ITなどのテクノロジーの変化などには注目するべきでしょう。


ただ、もうひとつ確認しないといけないのは、ビジネスの本質なのですね。
価値の創造と提供、それによる利益の獲得という点はまったくもって変わっていません。


これに対しても貨幣経済から承認経済へのシフトという話がありますが、とはいえ、現実としてお金がなければ食べてはいけません。
このお金も短期的な目の前のお金だけでなく、自分の親をどうケアするか、子供をどう育てるかを考えなければなりません。
ずっとお一人さまの場合も、離婚してお一人さまになってしまった場合も、自分で自分をどう支えるかを考えなければなりません。


もう一つ、ノマド礼賛の論拠として現状の企業の閉塞感、既存の組織でのイノベーションが困難であることなどを上げることがあります。
これも、気持ちはよくわかるのですが、ノマドはそれに対して劇的なソリューションになるわけではなりません。
まとめる人や場というのは必要になるわけで。
そもそも、今時閉塞感がなくイノベーティブな組織もあるわけで。
ノマド礼賛論者が煽る、ノマドがすべてを解決する的な議論は乱暴すぎるように感じます。


ずっとTwitterなどで発信していることなのですが、現状のノマド礼賛が、87年にリクルートがフリーターという言葉をつくり、煽り、結果として希望難民を大量に産んでしまったことと同じ空気を感じます。
フォローするとリクルートも当初は組織にとらわれず、自分の夢に向かってチャレンジする生き方を応援するために、良かれと思って作った言葉のはずなのですが。


同じ結果にならないかと曖昧な不安を感じています。




ところで、ノマドって何?




最近話題のノマドですが、まず、この意味自体が実に曖昧だと感じます。
ノマド論者の間でも統一されていないように感じていますし、まぁ、まだ統一される時期でもないのでしょう。


ちなみに、高校の後輩で、世界のサッカーを現地で観戦しつつ働いている人がいるのですが、彼とノマドについてメッセージのやり取りをしたところ、当初は噛み合いませんでした。
というのも、彼の思うノマドと、最近、日本で取り上げられているノマドがまるで意味が違ったからです。


個人的に解釈したのは、ノマドライフの定義として、場所、所属組織、時間、この3つの自由によってノマドは成り立っているのではないかと。
ただし、この3つはの自由度は段階があり、これによってノマド度が変わってくるのではないかというわけです。
また、相田みつをの「幸せは自分の心が決める」なんて言葉がありましたが、ノマドかどうかは自分の心が決めるのだとも言えるでしょう。
このあたりは、「ハードロックとヘビメタはどう違うんだ?」的な、個人の定義によると言えるでしょう。


まぁ、組織に所属しつつも、スタバで、MacBookAirを叩いてずっと仕事をしている人などもノマド呼ばわりされているのも現実なのですけどね。




ノマドで食べていく方法の真実、ぶっちゃけ話




ここまで事実上、ノマド批判を書きまくってきてなんなのですが、私も事実上、俗に言うノマドワーカーなんですね。
一応、今は組織に所属しているのですけど。
そう、よくTwitterでは起業家なんてリストに入っているのですが、私は普通のサラリーマンであり、会社の株も持っていません。
いつも、日本のどこかにいて、移動中や喫茶店やホテルで仕事をして、様々な人とつながりあって仕事をしています。
一応、著者の末席に加えて頂き、大企業を辞めて約3年、なんとかやっています。
まだ成功哲学なんかを語る年齢ではありませんが、あくまで参考として、ノマドでなんとか食べていく方法をお伝えしたいと思います。




1.「断らない力」仕事は原則断らない


「断る力」なんて言葉があり、職場では上司も部下もこの力を使おうとして血みどろの抗争が起きかけたようですが(...やや盛っていますが実話です)、「断る」なんて言うのは、自分の軸ができてからです(勝間さんの本にも本来、そう書かれているのですが)。
ガムシャラに働くことで、経験はたまり、だんだん自分の向き不向きがわかってきますし、自分に合った仕事がくるようになります。




2.「顧客」「仕事」を確保する


顧客や仕事がゼロな段階での独立は危険です(独立型ノマドの場合ですが)。
今、生活にかかっているお金の2/3は確保できる状態にしておきましょう。
独立して成功(いや、生活というレベルでいいです)しているフリーランスも、ベンチャー企業も顧客がいるということは大事です。


そして、その顧客が期待している以上の成果をお届けしましょう。
「期待している以上」というのがポイントで、世の中全体で「最高」でなくても構わないのです(もちろん、向上するための努力をするのですが)。
顧客の期待に応え続けましょう。




3.「新規営業」はしない


営業を1週間でも経験した方ならわかるかと思いますが、新規顧客の獲得には既存顧客を獲得する数倍のパワーがかかります。
独立型ノマドの場合、その時間をとられるのはもったいないのです。
頼まれた仕事を中心に応えていく方が、気持よく仕事ができます。
だから、「断らない力」が大事なのですが。




4.セルフブランディングはしない 品質とポジショニングだけこだわる


俗に言うセルフブランディングのほとんどが無駄です。
というか、セルフブランディングメソッドが広がりすぎて、やっても見破られます。
「あぁ、こいつ、Facebookのプロフィール、盛ってる。痛い!」みたいな。


自分のブランド力を決めるのは、結局、自分の仕事なのですよね。
そのプロセスと結果の質にこだわる、と。
セルフブランディングにやや近いと言われるかもしれませんが、ポジションニングにだけは気をつけます。
自分がその世界の中でどの位置にいたいと思うのかを考えます。
まぁ、これはセルフブランディングというよりは、人生戦略ですけどね。




5.「つながり」に依存しない


異業種交流会やソーシャルメディアでのつながりのすべてが自分を助けてくれるわけではありません。
家族と親友、これが最強です。
「いいね!」ボタンを押してくれた人は意外に人生で助けてくれません。
一緒に泣いてくれる家族と親友がいればいいです。
さらに、師匠、メンターが数人いればばっちりです。




6.得意なことをやる


強みを伸ばすというやつですね。
苦手なことはやらない、あるいは誰かに助けてもらう、と。


この強みも、もちろんどんどん磨いていくこと、新たに作っていくことが大事なのですが。
あと、強みはいくつかを掛け算するとオリジナルなものになりますね。




7.自然に変化、進化する


時代の変化を感じ取りつつ、自分も変化すると。変化を目的化してはいけないのですけどね。
特にフリーランス型、独立型ノマドの場合、自ら変化をしないとマンネリ化しますしね。

8.面白い仕事をする


プロセスもアウトプットも「あの人(と)の仕事は面白い」と言われるように努力します。
いや、これはウケ狙いなんかをしてもしょうがないことで、取引先や仲間と一緒に楽しみ尽くすわけですけどね。




9.「武器」に投資する


ずばり、PCやオフィス用品など仕事道具に投資するということですね。
これは世間の評判よりも、自分にフィットするものでいいでしょう。




10.謙虚でいること


一流と超一流の違いは謙虚かどうかです。
謙虚に人の話を聞くこと、努力することは大事です。
自分という存在が大したことがないことは、自分自身が一番知っていないといけません。


私も仕事を頂くたびに「あぁ、私なんかがこんな大きな仕事を頂いちゃった。申し訳ないなぁ。がんばろう」と毎回思うわけですよ。












特にフリーランス型ノマドは、何かとコンプレックスを抱えがちです。
そりゃそうです。
「結局、勤めていた会社で成果出せなかったんじゃん」と周りから見られたり、自分でもそう思ってしまったりするものです。
よくそこで、「優秀な○○さんを使いこなせなかった大企業はバカだ」という話になるわけですが、これもまた言いっ放しの批判です。
多様な人材の活用は日本企業の課題です。
ただ、個人の処世術において言うならば、向いているかどうか、好きかどうかだけの話だと割りきってみるのも手です。
私もこれまで勤めていた大企業の社員から面と向かって、あるいはネット上で「お前は大したことがなかった」「○○の方がすごい」みたいな話をされたことがありましたよ。
そういう時こそ、謙虚に拳を握り、ぐっと堪えるのです。
今からそいつをこれから一緒に殴りにいきたい、そんな衝動をおさえ、踏まれて強くなってきました。
そして、幸せこそが最大の復讐ですしね。


素朴な問題提起から、最後はとんでもない自己啓発メッセージになってしまいました。


まぁ、一言で言うと、ノマドは楽ではないですよ。
今後、社会的にどうサポートするか取り組みは必要ですが、牧歌的なノマド推しにはひいた視点も必要なのではないでしょうか。
氷河期時代の就活を体験し、10年後明らかに会社に残っていなそうなヨボヨボの社員に「10年後、どうなっていたい?」と聞かれ「"オトナ社会"に取り込まれるものか」と思い、内定式をサボるなど精一杯の抵抗をしつ結局、会社に勤め、残業、接待、希望外の異動、出向、転勤、過労でダウンなどサラリーマンらしいことをひと通り経験し、現在、ノマド的な生き方をしている私のぶっちゃけ話でした。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。