お客様第一主義ってどうなの?デキる営業になるためには

2012.4.13  7937Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


先日、アゴラに掲載されていた「お客様は神様」なんかじゃない」という駒沢丈治氏のエントリーを興味深く拝読しました。
いつも、若手営業マンや就活生と接している者として共感し、思うところがありました。


駒沢氏の論旨とはややずれますが、日々、日本の営業マンやその予備軍と接していて感じることを述べたいと思います。





「お客様に満足してもらいたい」のウソ




「お客様は神さま」「高い顧客満足度を勝ち得る」と口に出して言う人に限って、言っていることと行動がずれていて残念なのですね。


いや、残念どころか、むしろ有害なことすらあります。
営業とは、顧客との接点を持つ仕事です。
つまり、企業活動の要である価値の提供の最前線に立つ仕事です。
ズレている営業マンは、顧客に期待以上の価値を提供できていないわけです。
そんな企業が高い業績を上げられるわけがありません。
顧客満足度に関する言葉を発する人に限って、ごく表面的にしか顧客を満足させていません。


もう少しだけ具体的に言うならば、例えば「顧客の課題を聞くようにしている」は美談ですが、当たり前のことです。
もっと言うと、表面的なヒアリングを元に提案するのは危険です。
例えば、初期の『美味しんぼ』に出てくるエピソードですが、「夏バテで困っている」と言っている人に、鰻を食べてもらうのは、本当にいいことなのでしょうか?
違いますよね。
疲れている人にとっては、元気が出ると言われている食材はむしろ身体にとって負担になるのです。


「顧客の課題には何でもこたえる」と言っている人は、何でもこたえているようで、何の役にも立たないです。
「お客様の笑顔のために、笑顔でがんばります」は学生がよく発する自己PRですが、自分の笑顔だけで笑顔は実現できません。
「儲けを度外視してでも顧客満足のために努力する」という人もいます。
気持ちはわかりますが、長期的なことを考えてやっているならともかく、短期的にはますます質の悪いサービスを提供することになることもあるわけです。


思うに、営業ほど世間から誤解されている仕事はないです。
ドラマや漫画で描かれる営業マンの姿は、ペコペコする売れない営業マンはもちろん、かっこいいデキる営業マンも現実と大きくズレています。
就活する学生は、営業は「コミュニケーション能力」と「顧客の笑顔」という2つのキーワードに騙され、居酒屋アルバイトなどを例に、いかにコミュ力が高く、笑顔で接したかの話をするわけです。
これではズレる連鎖が続きますね。


このように、デキる営業マン像はズレ続け、顧客満足の誤解は広がるわけです。




a0002_003872.jpg




デキる営業とは顧客に対する価値と、自社の利益を最大化できる人




ここで、皆さんが大好きなお店、例えば飲食店のことを考えてみましょう。
転職漫画『エンゼルバンク』(三田紀房 講談社)にも出てくるエピソードなのですが、皆さんが大好きなお店は、すべてがお客様に最高の笑顔を届けているでしょうか?




実はそうでもないですよね。それこそ、無愛想な頑固親父が店長の寿司屋、蕎麦屋なんていっぱいありますよ。
でも、そういうお店は「予約がとれてよかった!」「今日も美味しいものをありがとうございました!」と、お客さんの方から感謝するわけです。
顧客が満足するということの真の姿は、これです。


営業マンに関していうならば、上辺だけで「お客様は神さまだ」と連呼することでも、笑顔で接することでも、コミュニケーションが上手なことは最も大事なことというわけでもありません。
良い提案をして顧客に高い価値を提供すること、結果として自社に高い利益をもたらすことができることこそが大事です。
この、当たり前のことを若手営業マン(いや、ベテランも)や、営業志望の就活生はまったくわかっていないと感じます。


「期待を上回る価値の提供」こそが顧客満足のポイントです。


ここで大事なのは、別に値段を上回る価値でなくてもよいということです。
値段を上回りすぎると、自社が損するだけの話になりますからね。
もちろん、WIN-WINの関係と言いつつ、最初は顧客の方が笑う量が多いくらいでいいのですが(これはあくまで精神論です)。
「お客さんのニーズに合わせる」も美談ですが、合わせるだけではだめです。
期待値をこえるものでなければいけません。


よい提案をして、その効果にこだわること、これこそ営業の仕事です。
コミュ力といいますが、これが大事なのは良い提案をするために深くヒアリングをすることが必要であるからです。
単に聞くだけでなく、潜在的なニーズも見逃してはいけません。


私の尊敬する方は、先方の話だけでなく、頷いた部分、目の色が変わった部分も含めてメモをしていました。
そのポイントをヒントに深い提案をしていたのです。
顧客満足度を高めるためにはこういう努力が必要なのです。






自分はラッキーなことに、15年間のサラリーマン生活で、たくさんのデキる営業マンとダメな営業マンと会うことができました。


日本という国が一刻も早く、営業という仕事の幻想から脱却してほしいなと思います。はい。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。