就活は、ウケるネタ披露の場ではない!学生生活を丁寧に振り返る

2014.4.14  2751Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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三浪して早稲田に入った彼が、上手くいかないのは何故か?


4月です。大手企業を中心に面接シーズン真っ盛りです。街でリクルートスーツ姿の人を見かける機会も増えましたね。一部はリクルートスーツをそのまま着ている新社会人だったりもしますけど。

学生さんからメールを頂く機会も増えました。「就職先が決まった」「内定が出たが、どこに行くか迷っている」というものから、「内定が出ない。何がまずいのだろうか」というメールまで、内容は色々です。

先日頂いたメールも、「なかなか内定が出ない」という内容のものでした。日本経済新聞さん主催のセミナーで講演した際に、参加していた早稲田大学の学生でした。本人に許可を頂き、質問内容の要約版をお伝えしますね。


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●(3月中旬現在)10社ほどESを出し、1社以外全てESかテストで失敗しており、10社返事待ち。
●エントリーしている企業は全て大手で、総合商社が第一志望。
●本人が考える敗因は、主に次の3点。1.ESの内容及びネタの質が低い、2.テストの結果が悪い、3.経歴が他者より劣っている
●敗因の1と3については、彼は(本人曰く)底辺高校から三浪しており、大学の成績も悪く、留年寸前かつ必修も2つ残している。
●自己PRや学生時代頑張った事では浪人(宅浪)かナンパについて書いており、忍耐力やチャレンジ精神、行動力をアピール。
●どちらも誰でもできる事ではないので、営業としてなら使えると思ってもらえると期待していた。
●これ以外にアピールできるとしたら、無難にアルバイトかサークルくらい。
●短期ではあるが、治験(ジェネリック医薬品の実験台になる代わりに10万近くの報酬)と東大医学部の准教授に定期的に心理学の実験のバイトの紹介を受けている。これらを行動力で勝ち取った。
●敗因の2に関して、テストセンターかWEBテストが必要な企業は全滅している。どちらも手応えは5~6割ほど。
●テストがダメなら行動力で勝負しようと考え、テストセンターで不採用の通知をもらった総合商社に訪問してきた。人事の方に会って面接をお願いしたい、と受付の方に言ったが、ダメだった。次の日、会社から出てきた社員の方に上記の旨を伝え、連絡先の書いたメモを渡してきた。しかし、人事の人には伝えてもらえなかった。また行って今度は会社から出てくる権限のありそうな年配の社員片っ端から声かけて人事を紹介してほしいと伝えるつもり。
●今後も不採用の企業は全てに訪問しに行こうと思っているのだが、そもそも就活において敗者復活は存在するのか?行動力や度胸のアピールになると考えているのですが、甘いだろうか?
●面接まで行くことができれば勝算はあると思うのだが、そこまで行けず焦っている。
●大手に行って人生を逆転させたい、その思いで高学歴を手にしたのに、全く恩恵を感じることができない。
●営業なら活躍できると確信しているだけに、悔しくてならない。
●友人や先輩からは「お前なら就活楽勝だよ。」と挫折克服経験や行動力から言われるが、結果は真逆。
●自分自身もテストとESは学歴フィルター程度としか考えておらず、面接の対策くらいしかしていなかった。
●就活も2月から始め、考えの甘さ故に苦しんでいる。
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こんな内容でした。苦労している様子などが伝わってきます。一方で、就活のことを大きく勘違いしているなと感じました。皆さんはどう思いましたか?


相手の立場で考える


私が彼に送ったアドバイスのメールをもとにしつつ、彼の何がまずいのかを確認していきたいと思います。
彼とは直接会って面談したわけではないですし、採用というものは、人と企業の相性であり、ケース・バイ・ケースではありますが、私なりに考え、彼に伝えたことは次のようなものです。

まず、もろもろ採用の前提を確認したいと思います別に就活はネタ対決ではありません。採用基準は、各社により違うものの、基本的には次のような点が問われます。

●デキそうか
●ノビそうか
●合いそうか

これを判断するのが選考の基本です。この中でも、「合いそうか」については、あえて合わない人を何割かは採るという技もあるわけですが。
この3つについての説得材料という要素も含め「学生時代に力を入れたこと」などを伝えるわけですが、その際に...。

●そのエピソードは適切か
●それが適切に伝わるように表現できているか

この2点が大切だと言えます。

まず、彼は、エピソード選びが、企業に対して不適切だったことが考えられます。

特にナンパのエピソードは、エントリーシートの段階では単にモラルが低い人と解釈されてしまう可能性があります。リクルーターなどとぶっちゃけ話をする時には、中には理解してくれる人がいるかもしれませんが、相手、企業を選ぶエピソードですね。(本人の言う)底辺高校からの宅浪、3浪にしても、努力した話だとも言えますが、なぜ3浪もしてしまったのか?という点に疑問を持たれることも。また、2年くらいの寄り道は理解する人事はいますが、3年となると首をかしげることも。まあ、なぜそうなったのか、理由によりますが。
アルバイトやサークルの取り組みについてあっさり「無難だった」と言っていますが、本当にこれは無難でしょうか。何をどうやったのかを丁寧に振り返ってみると良いでしょう。
一方、「おいしいバイトをしている」と書いていましたが(ジェネリック医薬品の実験台になる代わりに10万近くの報酬というバイト)、これも伝え方を気をつけないと、倫理観は大丈夫かと疑う人事はいると思います。
SPIなどについては、ひたすら練習するか、あまりこの手のものを重視しない企業を受けるかですね。

また、落ちた企業について「もう1回受けさせてくれ」というのは、ごくたまに熱意が通じる企業はありますが、人気企業、大企業は滅多に対応してくれないと思ってください。採用の忙しいこの時期にこられても迷惑だと思われると思います

敗因を良く分析し対策をする、応募先を選ぶことでまだまだ挽回できますけどね。学生時代のエピソードを伝える際は、相手がどう思うのかという視点を大事にしたいところです。ウケ狙い大会ではありませんから。まずは、自分の学生生活を丁寧に振り返りましょう。

そうそう、オススメの本ですよ。2010年に発売されロングセラーになったあの本のリニューアル版『最新版 就活難民にならないための大学生活30のルール 』(主婦の友社)が発売されました。

 

大学生活ガイドなのですが、新入生はもちろん、3、4年生によく読まれている本なのです。特に就活中に、大学生活を振り返る際に、ヒントになる本です。17名の学生生活のエピソードは読み応えがありますよ。ぜひ手にとってくださいね。内定がまだない人も就活はまだまだこれから。応援しております。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。