採用担当の悩み...エントリーシート(ES)や面接で学生に「何を問うか」は結構、深い

2013.5.31  1909Views

みなさん、こんにちは。常見陽平です。
 
 
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志望動機、成功体験の聞き方もいろいろある


 
今回は、採用の裏側の話をしましょう。
エントリーシート、グループディスカッション、面接など、学生に何かを問う場面というのは、就活の選考でつきものです。
これもまた、実は深いということです。
 
以前、関西の有名大学のキャリアセンター職員からこんな話を聞きました。
 
「日々、エントリーシートの添削をしていますが、ここ2~3年でエントリーシートの項目が変化しました」
 
より具体的には、エントリーシートにおける設問がより具体的で、誘導的になったのだといいます。
以前の設問は「志望動機を教えてください」「あなたの成功体験を教えてください」というシンプルなものだったそうです。
 
でも、最近のエントリーシートはそれぞれ、
 
「あなたはなぜ当社を志望しますか?あなたがどんな人間なのか、当社をどうとらえているのか、どんな活躍をしたいか、などをふまえて記入してください」
 
「あなたの成功体験は何ですか?それはいつ、どこで、誰となしとげたものですか?そのためにあなたはどんな努力をし、どんな壁を乗り越えましたか?結果、どんな成長、変化がありましたか?」
 
など、より具体的な問いになったと言います。
 
志望動機や成功体験を聞いていることには変わりはありません。
ただ、より具体的に質問しているわけです。
当然、具体的に書くことが期待されます。
細かいようですが、これもまたちゃんと、設問の意図があるわけです。
 
ややうがった見方をするならば、毎年、ざっくりと書いてくる学生が多いので、人事として知りたいことをちゃんと答えてくれるだろうという期待のもとにこうしたということも想像できます。
一方で、ざっくりと「志望動機を教えてください」「成功体験を教えてください」と聞くのも、これはこれで意図がなくはありません。
このような、ざっくりした問いかけでも、相手のことを考えて具体的に説明できるかどうかが問われるとも言えます。
 
このように、設問一つとっても深いのです。
 

質問、課題で大失敗ということも


 
採用担当者も人の子です。
特には失敗もあります。
設問によって、学生について知りたいことが分からなくなってしまうこともあるわけです。
設問の意図というのは必ずあるわけですし、議論を重ねた上でつくるわけですが、時に大失敗してしまうことがあります。
 
例えば、グループディスカッションの質問作りというのはなかなか深いです。
外資系企業などでありがちな、ケースを配って、ロジカルに考えられるかどうかを問うようなものは目的が明確ですが、まずは応募者を集めて、基礎的な力があるかどうかを問うようなタイプのグループディスカッションは逆に、質問の設定が難しいです。
 
よくある失敗は、事前にある「知識」で大きく差がついてしまうような設問ですね。
事前の知識がある人が、実力以上に優秀に見えてしまう(その逆もあり)という。
もちろん、それくらい知っておけとか、面接官もそれくらい見抜けという話になりますが。
 
みんなが参加しやすく、かつ見たい力をちゃんと把握しやすい設問作りは実に深いです。
深く考えて作っても、やってみて大失敗ということもあるわけです。
 
というわけで、採用担当者も神様ではありません。
設問で大失敗ということもあるわけです。
 
学生の側として考えるべきことと言えば、設問の意図をひたすら考えることですかね。
どんな質問にも意図があるはずです(このように、すべるケースもあるわけですが)。
 
その質問を通じて(あるいは、他の質問を含めて)、何を知りたいのかを考えてみましょう。
 

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。