エントリーシートにありがちな、学生の「ウェブを使って、仕掛けます」はたいてい怪しい

2012.2.16  929Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


例年より遅く始まった就活も、エントリーシート(ES)提出などが迫ってきました。
ESは元々、通常の履歴書よりも学生をもっと理解できるはずという理由で導入されましたが、最近では難問化、煩雑化が進んでいるように感じます。
ESのあり方自体の見直しも議論されているものの、今年も就活は進んでいきます。



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企画提案型ES 学生は「ソーシャルメディアで仕掛ける」と言うけれど


「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」「志望動機」「将来の自分」などのおなじみの質問の他に、ESでよくある質問は企画提案を求めるものです。
新しい商品を企画する、既存の商品のマーケティングプランを考えるなどです。


これらの問いに対する答えで学生がよく提案するのは「ネットを使って販促する」というものです。
より具体的にFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアの名前が入ることもあります。
就活に限らず、学生はゼミなどの発表でも、インターンシップなどでも「ネットを使って何かやる」と言います。
学生のブログのエントリーや、Twitterなどをみていてもそんな話をよく見かけます。


こういう発言を見て、いつも「残念だな...」と考えます。
というのも、「ウェブを使って何かやる」は誰でも言えるわけで、どうやるのかが設計されていないと全く意味がないのですね。


学生だけではありません。
社会人の営業の提案を見ても、それこそソーシャルメディアの専門家を名乗る人などでも「ネットを使って何かやる」という域から出ていない人をよく見かけます。
大変残念です。


もう2012年です。
そろそろ具体的なやり方を考えるか、ネット幻想から目を覚ましましょうよ。




「集める」「動かす」をおさえる




「ネットを使って何かやる」ということを言う人に欠落している視点は「どうやって集めるのか」という視点です。
ウェブサイトにしろ、Twitterアカウントにしろ、Facebookページにしろ、まずそれをどうやって知ってもらうかを考えなくてはなりません。


実は成功しているウェブサイトは、広告宣伝費に莫大な予算をかけているのですね。
自分の好きなサイトを検索してみてください。
検索ワード広告がどんどん出てくることでしょう。
交通広告などにもお金を投下しています。


お金をかけずに広げることができると言われているソーシャルメディアにおいても、よっぽど面白いコンテンツや、手間暇かけている場合などの他は、人気になる人や企業はたいてい元々有名か、お金をかけています。
この現実に気づくべきです。


次に「動かす」という視点です。
次の、その次のアクションをどうとってもらうのか。
最終目的が達成されるのか。
そのために、理解をどう深めていくか、どう喚起していくかという視点が大事ですね。
ここが抜け落ちているのですよね。


まずは、成功していると言われているサイトや、ウェブプロモーションを研究してみましょう。
そして、この2つを意識するだけで大きく変わることでしょう。


というわけで、学生も社会人も「ネットを使ってなんかやる」という牧歌的な考え方をそろそろ卒業しませんか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。