「ブラック企業と呼ばないで!」企業は誤解されることを恐れている

2013.7.12  1326Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


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企業はブラック企業だと誤解されることを恐れている


「常見さん、ウチの会社って、ブラック企業なんですかね?」

人事担当者から、たまにこんな質問、相談を頂きます。
ブラック企業かどうかを外部の人に相談するのという行為自体、一見すると奇妙です。
ただ、実際、業務内容はブラックどころかホワイトで、採用活動も丁寧に行なっていると感じる企業でした。

よくよく聞くと、同業他社に有名なブラック企業があり、同業だけにこの企業も、きついのではないかと誤解されているとのこと。

なるほど、そうきましたか。


この手の話は、飲食業界の方からもよく頂きます。
飲食=離職率が高い、ブラックというイメージを抱いているようです。
実際、昨年、厚生労働省が発表した「新規大学卒業就職者の産業別離職状況(平成21年3月卒)」によると、平成21年3月卒の3年以内離職率をみると、「宿泊業、飲食サービス業」は48.5%で、「教育、学習支援業」の48.8%についで、2位でした。
HR総合調査研究所の「2014年度企業採用動向アンケート調査 学生就職活動アンケート調査 報告書」においても、「最も敬遠する業界」では「外食」は25%で1位でした。

ただ、飲食=どこでもブラックというのは少し、違うと思います。

労働条件を少しでも改善しようという動きは見られますし、長く続けられる工夫をしている企業もあります。

実際、飲食業界の人事から

「社長が離職率の高さに悩んでいる。私も問題だと思う。上手く行っている企業の事例を教えてほしい」

という相談が入ることもよくあります。


早期離職率に関していうならば、退職した理由こそ重要です。
もともと、飲食業界に関して言うならが、同じ業界内で動く傾向が強いと言われていますので、早期離職率が高い=ブラックというわけでもありません。

70年代後半〜80年代にゲームセンターの第一次くらいのブームがあったころ、当時、ゲームセンター=不良の溜まり場と言われていました。
いや、実際、当時は不良が多かったと言われていますし、実際、私も目撃しました。ただ、真面目なゲーマーもいるわけで。一つにくくることもできません。

そういえば、先日は、メディアで叩かれているブラック企業に勤めている方が、「メディアの報道があまりにずれている。実態を聞いてほしい」と連絡をくれたことも。
まだお会いしていませんが。
その企業に関する報道の一部は実態とずれているということを言いたいようです。

最近は、ブラック企業だと誤解されないためのノウハウセミナーなども立ち上がっています。
各社とも、ブラック企業だと誤解されることを恐れているわけです。


結局、戦う知識を知るのが勝ち?



ブラック企業に関する記事は、このコーナーでも何度も書いてきました。

採用活動からわかる、ブラック企業の見分け方

ブラック企業に入ってしまった時に...ヤバい会社の餌食にならないための労働法


採用段階でなんとなくつかむことはできますが、完全に見破るのは不可能です。

また、「ブラック」という言葉にひっぱられるのもちょっと違うと思います。
以前のエントリーでふれたように、ホワイト企業のブラック部署、ブラック上司という問題もあるわけで。
それこそ、1回もブラック企業だという噂が起きていない企業で、軍隊的人間関係があったり、従業員数に対するメンタルヘルス問題発生率が多いなどという問題も起こっているわけです。


その問題が本当に起きているのか?
具体的に何が問題かを把握すること、さらに、何か起こったとき、困った時にどう対応するか、戦う知識を身につけることが大事だと言えるでしょう。

そうそう、お知らせです。
『ブラック企業』(文春新書)の著者、今野晴貴さんと一緒に本を出します。
IT企業という怪物 組織が人を食い潰すとき 』(双葉新書)です。7月16日発売予定です。
やはりブラック率が高いという声もあるIT業界で何が起こっているか。レポートしています。
IT業界=ブラックだと言っているわけではありません。最先端業界のジレンマを伝えています。

ぜひ、手にとってください。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。