『ブラック企業に負けない』むしろ、入ってしまった後が大事

2011.9.28  8467Views

こんにちは。常見陽平です。




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誰もがブラック企業に入りたくないのだけれども




NPO法人POSSEさんから、
新作『ブラック企業に負けない 』(NPO法人POSSE、 今野 晴貴、 川村 遼平 旬報社)を献本頂きました。
ありがとうございました。


ブラック企業本はこれまでも何冊か出てきましたが、
この本は「万が一、ブラック企業に入ってしまったらどうするか」というノウハウが極めて具体的にまとまっており、実用的だと言えます。


ブラック企業には誰もが入りたくないわけなのです。


しかし...。


このあたりは実に巧妙で、入ってみたらブラック企業だったということもしばしば。


それこそ、「あそこはブラック企業ではないか?」と2ちゃんねるなどで話題になり、
Googleで検索した際も「○○社 ブラック」「○○社 詐欺」「○○社 倒産」などが出てきて、
「!」と思うわけですが、人事担当者に相談しても「いやあ、ああいう噂は信じちゃいけないよ」と言われ、
入社してみてびっくりという...。


特にブラック企業にとって、新卒の学生は「騙しやすい」存在です。


就職難の中、ブラック企業が採用しやすい状況になっていることや、
採用活動の過程においてマインドコントロールしていくという側面もあるでしょう。


ただ、「じゃあ、中途採用だったら騙されないのか?」というと、そうとも言えません。


企業をみる眼を鍛えなければ、気づけばまたブラック企業に...ということもあり得るわけですよ。


ブラック企業の定義は、法律を守っているかどうか、
労働環境・条件がきついかどうかのマトリクスで分類できるわけですが、
真性ブラック企業は商取引も法律を破り、サービス残業や不当な解雇もあり、
従業員を心身ともに追い詰め、「使える」うちは使い倒し、使えないと解釈されると追い詰めるという...。


まったく、そういう企業だけには遭遇したくないと誰もが思うはずです。




優良企業のブラック部署、ブラック上司




さらに言うならば...。


上場企業や、優良企業と言われる企業でも、ブラック部署はあるし、ブラック上司はいるわけなのですよ...。


「あの部署は軍隊みたいだ...」とか「あの人の下だと、人が壊れる...」という。


そういう部署や上司に限って、数字面での業績はそれなりによかったり、
過去の功績があったりして踏み込めないという。


この本の前書きで語られている「ブラック企業は入ってからが大事」というメッセージは、
そういうわけで説得力があるわけです。


今までの本は「ブラック企業の見破り方」などがよく掲載されていたわけですが、
ブラック部署、ブラック上司のことを考えると、「そうなったときにどうするか?」ということが大事なわけです。


この本には、いざとなったときに未払いの残業代を請求する方法、証拠の残し方など、具体的なノウハウが掲載されています。


就活が始まる前の学生、来年から社会人になる方はぜひ。
大学教職員や親御さんも読んで損はない本です。


それにしても...。
冒頭の事例が生々しかったです。こわい...。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。