リクナビ、マイナビだけがナビじゃない!地元ナビって使ってる?

2012.8.15  5140Views

こんにちは、常見陽平です。


「日本の就活をダメにしたのは、リクナビです」


先日、ある自治体で講演した際に、主催者の代表が冒頭のスピーチでこんなことをおっしゃっていました。
これ、テレビで中継されていたら歴史が動いていたかもしれませんね。




a0001_008069.jpg




就職ナビ悪者論が止まらない






いまやすっかり悪者になっている就職ナビ。
最近では学生も企業もナビ離れが顕著ではありますが、かつて、就職ナビは希望でした。


就職ナビを使えば、学生は居ながらにして企業情報の収集だけでなく、説明会などの予約や、エントリー、面接の合否連絡を知ることなどが可能なのですから。
就職ナビは90年代後半に登場し、就活の定番となっていきました。


就職ナビは就活のやり方を変えました。
情報を自由に閲覧できること、ネットからエントリーや合否確認をすることができ、これで就活の大部分を完結できることは革新的でした。


「自由に閲覧、自由に応募」


当たり前のようで、これは大きな変化です。
その昔、まだ大学への求人票を中心に就活が行われていた時代では大学間の格差は顕著でした。
皆さんは存在すら知らないかと思いますが、以前はリクルートブックなどのような、個別に宅配される就職ガイド兼資料請求ハガキがありました。
これまでの大学にくる求人票を中心としたものとは違い、学生に対してより多くの企業の情報を提供し、企業にも採用のチャンスを提供しました。


でも...。
別に全ての大学の学生に、全ての企業の情報が届くわけではなかったんですね。
資料請求しても、門前払いされることもよくありました。
就職ジャーナルによると、90年代半ばの資料請求ハガキの返信率は全体で43%程度でした。
もちろん、大学群や男女によりメリハリがあるのですが、この段階でかなり絞られていました。


就職ナビができてどう変わったのでしょうか?
これにより、企業にとっては採用ターゲットにならない学生でも大手企業、人気企業の求人情報を閲覧でき、応募ができるようになったのです。
しかも、就職ナビによっては一括応募機能があり、複数企業に簡単にエントリーできるようにもなりました。


でも、これは採用する側の企業に混乱をもたらしました。
ハガキなどを使わないので、データの管理などは楽になったのですが、誰でも情報を閲覧でき、応募ができるため、応募数が劇的に増えたのです。


これにより、採用活動が大規模になり、かつ雑なものになっていきました。
大量にさばかなくてはいけなくなったので、会社説明会も大規模なものになっていきました。


面接プロセスにおいても、一度に大人数をみることができる、グループディスカッションなどの導入が加速されました。
他の面接なども時間をかけられず、雑なものになっていきました。
会社説明や、選考に手間暇をかけられないので、結果として、採用後のギャップやミスマッチも問題となっていきます。


応募のハードルを上げるために、エントリーシートの量や難易度も上がっていきました。
しっかりとしたものを書くためには、一晩どころか数日かかることもあります。
エントリーシートに限らず、各種適性検査や面接手法など、採用手法の多様化、高度化は就職ナビの普及と連動して広がってきたと言っても過言でありません。


企業側では、就職ナビサイト経由できた学生がマッチ、フィットしないことが問題となってきます。
ネット上での情報のみで簡単に一括エントリーするので、応募数は増えるのですが、企業にマッチした人が応募してくるとは限りません。
ある中堅・中小企業の人事担当者によると、応募の大半は就職ナビサイト経由なのですが、内定者に占める就職ナビサイト通過率は5%程度だったいいます。
これって、どうなんでしょう。


というわけで、就職ナビはまるで出会えない合コン、釣れない釣り堀のようになっているのです。
学生から見ても、企業から見ても。




地元ナビを使ってみよう




就職ナビ見直し論が盛んなのですが、とはいえ、その就職ナビにも色々なものがあります。
リクナビ、マイナビに限らず、様々な種類のナビがあります。
その中でも、注目したいのは、「地元ナビ」です。
どういうものでしょうか?説明しましょう。


これは、地元の求人を集めた、ご当地ナビです。
リクナビ、マイナビのように大規模なものではなく、そのエリアに限定したナビなのです。
いや、ナビと名乗っていないものも多数ですが。
自治体などが運営しているもの、地元の就職情報会社が運営しているものなどがあります。
今日は2つほど紹介しましょう。


1つは、中部地区で古くから活動している名大社さんのサイトです
中部地区に特化したサイトになっています。地元での仕事探しに便利です。


もう1つ、京都府のジョブパークのサイトにある、企業の魅力PRコーナーをご紹介しましょう。
実にシンプルなつくりで、掲載社数も限られてはいますが、京都府内の中堅・中小企業の魅力が伝わるつくりになっています。


他にも、地元限定の就職サイトはあります。
リクナビ、マイナビほどたくさん掲載されているわけではないですし、中には情報のフォーマットが洗練されていなかったり、情報量が少ないものもありますが。
でも、逆に掲載件数が少ないこと、エリアをしぼっていることなどから、身近な企業を探しやすいとも言えます。


ナビと言っても色々あります。
自分にフィットしたものを試してみましょう。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。