敢えて最低の時期に入社するという選択肢

2012.4.18  1714Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




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企業を叩くのは簡単だけど




「日本の家電メーカーは生き残れるのか?」


最近、話題ですね。


特にソニーは新社長の平井氏のもと、「ソニーを変える。ソニーは変わる」というメッセージを打ち出し、話題になりました。
もちろん、この発表には「具体案が見えない」という批判も相次いでいます。
正直なところ、日本の家電メーカーをどう立て直すか?
先行きは不透明で、よい材料もなかなか見えません。


いっそモノづくりをやめるべきだとか、アップルやGoogleを目指せというような正論のような極論が飛び交っていますが、これらの意見も別に具体的ではないです。
個人的には、ソニーという企業は、テクノロジーによる「ものづくり」だけではなく「コトづくり」、つまり新しいライフスタイル提案、場づくりが上手かった企業だと解釈しており、そこに回帰して欲しいと思いつつも、この私の意見も、ちっとも具体的じゃないですよね。
ただ、これはメディアというものはそうなのですが、何かあると「それみたことか」と集中砲火を浴びせるものです。
なかなかできないことではありますが、長いスパンで考えてみたいところです。


それこそ、この10年くらいをふり返ってみると、トヨタもソニーもパナソニックも何度か浮かんだり沈んだりしました。
ビジネス誌の表紙だけでも振り返ってみてください。
礼賛と叩きの繰り返しですから。
とはいえ、今度こそはダメなんじゃないかという空気が漂っているのも事実ではありますけどね。




最悪な時期に入ってくる人は覚悟が違う?




新卒で最初に入る企業をどこにするか、皆さん悩んでいることでしょうし、正直、入れるかどうか不安でいっぱいかと思います。
だから、いい加減なことを言うつもりはありませんし、最終的には自分で決めて頂きたいのですが...。


長い目で考えると、今、落ちている企業に敢えて行くという選択肢もあります。


私は1997年にリクルートに入社しました。
リクルート出身というと「人気企業出身ですね」「入るの、難しくなかったです?」と聞かれるのですが、90年代半ばのリクルートは既に大企業だったものの、決して立派な企業ではなかったです。
なんせ、リクルート事件を起こした会社ですし、借金も約1兆円ですよ。
ネットの時代になって、将来は大丈夫かと言われていた時期でした。
私は大学の中でも最も厳しいゼミの一つに所属していたのですが、このゼミには毎年、リクルートの内定者がいました。
私の同期も、3人くらい内定を持っていたように思います。
でも、16期続いたゼミでリクルートに行くと決めた人は私とあと1人だけでした。
競争戦略や企業分析を専門に行なっていて、同期も外資系コンサルや、メーカーのマーケティング部門に進んだ人だらけだったのですが、そういう視点から見ると、当時のリクルートに行くのはリスキーでしかありません。
実際、みんなからも「内定してよかったね」という意見と同様に、「本当にいくの?」と暗に問いかけられました。
でも、そんな時期に覚悟して入ってきた仲間は明らかに優秀でしたし、会社を、社会を変えようという気概に満ちていました。
約110人入社して、まだ残っている人は30人をきるくらいだと思いますが、中に残っている人も、出た人も大活躍しています。
学生に聞くと、現在、業績が傾いていてメディアで叩かれている企業のセミナーに行くと、集まっている学生は明らかに変革マインドが強い方ばかりだったとか。
もちろん、感覚的な問題ではありますけど。


敢えて最低の時期に入って、会社を変えようという気概で働く。
これも選択肢の一つです。


皆さんは、どう考えますか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。