採用予定数は信用できない?企業が内定を出す本当の人数

2011.5.24  30157Views

こんにちは、常見陽平です。


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採用予定数は信用できるのか?






今年は東日本大震災の影響で、新卒採用関連のデータの発表が遅れております。
無理もありません。いつもこの手の調査は2月頃に調査をします。


調査はたしかに行っても、震災の影響で状況はまるで変わってしまうからです。
メディアには、ちらほらと企業ごとの採用計画などは発表されていますが。


渦中の東電のように新卒採用をストップする企業もありますが、
大手企業の採用計画は今のところ、大きな削減の話はあまり聞こえてきません。


元々、大震災がなければ2012年度採用は2011年度に対してどの就職情報会社も微増のトレンドでした。
ところで、この「企業の採用予定数」ですが、本当に信用できるものなのでしょうか?
これについて考えてみましょう。






採用予定数と実際がブレてしまう理由








結論から言うと、採用予定数は目安の数字でしかないです。


次のようなブレが発生します。




1.業績の変動、採用方針の転換などにより増減する
2.歩留まり率が悪い企業や、売り手市場の環境においては発表した数よりも多く内定を出す
3.採用するレベルに至らない場合、そもそも応募がない場合は、発表した数ほど採らない


他にもありますが、主なパターンはこの3つです。


実は就職難と言われる昨今でも2のパターンをよく聞きます。
今年は採用時期が分散化、遅延化傾向です。


特に6月以降に総合商社にひっくり返されることを恐れて、内定を出す数を増やしている企業もありますね。
もちろん、数は変えずに辞退された分を追加募集で補充するパターンもありますが。


そして、最近顕著なのは3のパターンです。
採用予定数よりも4割少ない状態で終了する企業もありました。


中には「元々、その採用計画は、無理」というパターンでやっている企業もあります。


私が人事をしていた売り手市場の頃、各メーカーは技術職採用に力を入れていたのですが、
冷静に計算すると採用ターゲットとなる学生の数と、採用予定数のギャップが大きく、
どう頑張っても無理だろうということさえもありました。


そして・・・。


この3パターンからはやや外れますが、業績がよいことをアピールするために、
あえて採用予定数が多いことをアピールする企業も、実はあるのです。


採用予定数が多いことは人気企業ランキングアップにもつながるんですねぇ。
採用予定数はまず、目安の数でしかないことを覚えておいてください。






採用予定数だけでは分からない「中身」という要素






もう1つ、注意すべきことは「数」だけではなく、「中身」の問題があるということです。


例えば、「総合職で100名募集」という告知があったとします。


ただ、外部に明言しないものの、この中で配属先やタイプ別で数を決めている場合があるのです。
例えば、営業に50人、企画に30人、管理系に20人などと決めている場合や、
さらにエリアごとの人数比を意識していることも。


面接をしていて本人の適性や志向から「この人は営業タイプだな・・・」などという風に考えるわけです。


選考の後半日程になると、「営業タイプはほぼ採りきったけど、管理系が足りないな・・・」など、
水面下で採用方針が変わっていることも。


さらに、企業は絶対に口にしませんが、男女比も意識されます。


気づけばあなたの志望する枠がなくなっていることもあるわけです。




さいごに






まぁ、採用予定数の増減の背景は何なのか、
どんな人材を採りたいのかということは意識しておいた方がいいかもしれません。


もちろん、採用数の増減による有利不利はあるかと思いますが、
結局、内定か不合格しかないわけです。


あくまで目安に考えましょう。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。