採用担当者よ、「ウチは第一志望なの?」はそろそろやめにしよう

2012.4.19  21335Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




一次面接で「ウチは第一希望ですか?」と聞かれても




南山大学の女子学生から、相談のメールが届きました。
こんな相談でした。


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最近やっと面接まで、進むことが出きるようになりました。


その時に、「うちの志望度は?」
と聞かれるのですが、なんと答えたらいいのかわかりません。


今は、「ご縁があればぜひ御社で働かせて頂きたいです」
と言っているのですが、一次面接から
「御社が第一志望です。」
と答えるべきなのでしょうか。


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なるほど、毎日よくある悩みですね。


企業側の気持ちもわからなくはありません。
厳選採用になると、逆に内定を出した人には確実に入社してもらいたいわけですから、第一志望なのかどうかは押さえておきたい情報です。
とはいえ、採用担当者は、学生は演技するものだとも思っています。
どちらかというと、この質問をフックに、今、自社をどのように見ているか、どのような軸で就活をしているか、根っこの職業観を聞き出すキッカケになる質問ではあります。


とはいえ、これだけ演技を誘発する質問ってどうなのでしょう?
学生もそりゃあ、悩んでしまいますよね...。




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「第一志望」と言わざるを得ないかわいそうな就活生




学生がかわいそうだと思うのは、結局のところ、「第一志望です」と言わざるを得ないことですね...。
面接官からしても、せっかく業務を抜けて面接に協力したのに、「第一志望群です」と言われるとカチンとくる人もいるわけで。
学生は「その面接を受けている瞬間は、その企業を第一志望だと思って臨む」しかないということになります。


ただ、別にここで「第一志望です」と言わなくても、ホンネを語って内定した学生ももちろんいます。
ロングセラー『就活難民にならないための大学生活30のルール』(主婦の友社)でご紹介した、NTT東日本に内定した日大文理学部の学生の事例をご紹介しましょう。


彼は学生時代、ジャズミュージシャンとして大活躍。
ジャズの名店でステージに立ち続ける日々を送りました。
就活には音楽で培ったエネルギーをぶつけました。
結構な確率で最終面接まで進むのですが、必ず最終面接で落ちていました。
ある1点だけ正直になれていなかったのです。


「どの会社でも、 "第一志望"だと言っていたことでなんです。
嘘だろってばれていたんでしょうね。
どうせ、ジャズのために辞めるんだろうと思われていたのかもしれません」


内定先のNTT東日本だけは最終面接で唯一正直になれた会社です。


「御社が第一志望かどうか、正直私にも分かりません。
まだ働いたわけではないですし、ジャズの世界にも戻るかもしれません。
でも、働きたいという気持ちはあるんです」


こう伝えて内定がでました。
ホンネで語って響いた例ですね。




「第一志望ですか?」はもうやめにしないか?




やや極論ですが、企業の採用担当者は「ウチは第一志望ですか?」という質問をやめるべきだと考えています。
第一志望だと決められるだけの情報を開示しているわけではありませんし、普通に考えると同時期に同じくらいの志望度で活動しているわけですから、その企業以外で揺れていることは明らかです。
だいたい、その質問をしている面接官自体、その企業は第一志望だったのでしょうか?


そもそも、採用活動は「来たい学生」ではなく「欲しい学生」を採用する行為です。
欲しい学生は第一志望だろうとそうじゃなかろうと、志望度を上げ、口説き落とすのが採用活動です。
志望順位も、志望動機すら聞かずに、納得のいく採用活動をしている企業は多数ありますし。
この質問自体、企業側の採用力が弱くなっていることや、焦っていることの証拠だとも言えるでしょう。






ウソを誘発する「第一志望ですか?」という質問、そろそろやめにしませんか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。