楽天が経団連を退会 三木谷社長にぜひ議論を起こしてもらいたいこと

2011.6.24  994Views

こんにちは、常見陽平です。


楽天が経団連に退会届を出しました。


<楽天>経団連に退会届 「方向性や哲学が違う」と説明(毎日新聞)


数週間前にも三木谷さんがTwitterで「経団連を退会しようと思っているのですが、どう思います?」
とつぶやき話題になりましたね。


ここでは、ややミーハーな視点で、期待を込めて書くことにしたいと思います。




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 経団連の倫理憲章で学生は救われるのか? 
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私が楽天の三木谷社長に期待したいのは、経団連を離れた立場で、
自由な視点で日本の新卒採用をめぐる改革の迷走ぶりに対して大胆な提言を行って頂くことです。


2013年度から新卒採用のルールが変わります。
経団連の倫理憲章が改訂されます。


ワンデーインターンシップの禁止、
選考をかねたインターンシップの禁止、
採用広報解禁を12月1日にするなどが盛り込まれています。


「経団連に入って倫理憲章にサインした企業だけが対象なのでは?」と思うかもしれませんが、
就職情報会社もこのルールに則ったように参画規定を変えるので、影響を受けます。


就活の早期化、長期化や、それによる学業阻害などに配慮したものです。


このことは学生を救うでしょうか?
就活は改善されるでしょうか?


そんなことはありません。


学生、大学関係者、企業の人事担当者と話しをしていると、基本的に不満、不安の声しか聞きません。


「茶番じゃないのか」そんな声ばかり聞きます。


採用広報時期が12月に後ろ倒しになることは、
私が以前から指摘している構造的課題をさらに加速させる可能性があります。


B2Bの企業や中堅・中小企業に目がいかず、
短期間で業界や企業のことがよく分からないままにあっという間に選考がやってくる...。


経団連の動きとは別に、総合商社が夏に採用を後ろ倒しにするので、
先日のエントリーにも書いたように「まだ総合商社がある」と高望みして、夢が破れる・・・。


気付けば、就職難民にという状態は変わらないのではないでしょうか。






 後ろ倒しで様々な混乱が
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また、2ヶ月後ろ倒ししたところで、学生が勉強するわけではないことも再度、
強調しておきましょう。
いや、実はますます学業は阻害されるのです。


就活が始まったかと思いきや、期末試験がやってきます。
就活も勉強も中途半端になりませんかね。




12月に広報がスタートすることで、大学は混乱しています。


期末試験、入試があるので学内企業説明会の時期や日数に悩んでいます。
そして、開催できる日程が限られるので、「この大学には行かない」「この企業は呼べない」
という駆け引きが常に行われています。


そして、ルールをやぶるギリギリの動きが行われています。


例えば、
「選考に関係ない懇談会を実施する」
「キャリア支援と銘打って、1年~3年を対象にしたセミナーを学内で実施する」
「OB・OGとの交流会を実施する」
などの動きは企業でも大学でも広がっています。


「選考に関係ない」と言いつつ、どこまで関係ないと言えるのでしょうか?
様々な詭弁によりルールは破られていくわけです。


もちろん、採用活動の時期については日経などで後ろ倒しに7割が賛成などの報道がされましたが、
あの調査は記名式だったことが大きいのではと感じています。
私の周りにいる、大学関係者や人事は皆、首をかしげています。


ぜひ、楽天三木谷さんにはしがらみのない立場から、
新卒採用に関する議論の喚起を行って頂きたいです。






楽天の経団連退会のニュースを聞いて、ふと感じたことでした。


※なお、2013年度採用で起こる変化、今後の新卒採用のあるべき姿、
学生、大学、企業が取り組むべきことなどは、引き続き、このコラムで発信していきたいと思います。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。