「夢を追う人は美しい」を疑え!夢がなくとも目標・課題があれば働く人生は楽しめる

2013.9.24  1043Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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「夢を諦める期日」もちゃんと設けておく


突然ですが、皆さんは『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生 』(渋谷直角 扶桑社)という漫画をご存知ですか?



今、ベストセラーになりつつある本です。
著者が自主制作で発表した表題作が、少部数配布ながらツイッターなどで話題を集め、書籍化されたのだそうです。

表題作の他、「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」など、タイトルを聞いただけで「あぁ、痛い」と感じる作品だらけです。
いい年齢なのに、夢を捨てきれず、サブカルにまみれて自意識ばかりが肥大した、残念な20代、30代男女の肖像がシニカルに描かれています。

「キャリアを考えるのに参考になる楽しい本です。オススメですよ」なんてキレイゴト、無難な説明を言うつもりはまったくありません。
読んでいて爽快感などはほぼ一ミリもなく、どちらかというと不愉快な気分になります。
特に表題作などはややお下品な描写もありこのコラムで紹介するべきかどうか、率直に悩んだりもしました。
まあ、絵がかわいいですし、展開があまりにもベタなので、「あはは、痛いなぁ・・・」くらいで笑い飛ばすことができるのですが。

とはいえ、キャリアを考える上で良い「反面教師」になる本だなと思っています。
来年で39歳になるアラフォー(と言うと、今風ですが、残酷な言い方をすると中年)から言わせると、この漫画で描かれているような、夢を捨てきれずに自意識が肥大して、人生をこじらせている人って、実際、いるわけですよ。「あぁ、痛い・・・」と思いつつ、読んだ次第です。

ここ数年、「働き方ブーム」なわけであり、その中でもノマドなどの組織・時間・場所にとらわれない働き方や、世界に飛び込んで働く人などが注目されるわけですが・・・。
夢を追うこと、努力することはまったく否定しないわけですけど、明らかに自分の実力や置かれている環境を意識せず、単に自意識だけ過剰になってもしょうがないわけです。

夢を叶えたいと思うなら、覚悟も必要ですし、渡邉美樹氏の言うところの「夢には期日を入れる」ことも大事だけれども、一方で中川淳一郎氏の言うところの「夢を諦める期日」も大事なわけです。


夢がなくても、目標、課題があればいいじゃないか


さて、今年のドラマの話題作と言えば、TBSの『半沢直樹』とNHKの『あまちゃん』ですね。
今年の流行語大賞は、「倍返し」と「じぇじぇじぇ」さらには滝川クリステルが五輪招致スピーチで言った「お・も・て・な・し」 林修先生の「いつやるの?今でしょ!」の4つで熾烈な争いになりそうですね・・・。

この中でも、『半沢直樹』人気についてふれておきたいと思います。
なお、この原稿を書いている段階では最終回は放映前でまだ見ていません。ご了承ください。
そういえば、この番組ネタでTBSラジオの『Session−22』にも出演しましたよ。パーソナリティーの荻上チキさん、南部広美さん、ゲストの速水健朗さん、真実一郎さんと語り合いましたよ(ここで聴けます)。
このドラマは、放送しているTBSでもノーマークだったと言われるほど、想定外の大人気となり、高視聴率を誇っています。
出演者も男性だらけで、ビジネス色が強く、よくある売れるドラマとはつくりが違います。とはいえ、高い支持を得ています。

個人的に、このドラマが売れた理由として、若者も含めて世の中がサラリーマンを再評価しているからではないかと見ています。
やれノマドだ、起業だ、セカ就だという話が、意識高めにネットでは語られるのですが、世の中の現実としてデータを見る限り、終身雇用や年功序列を支持する割合はすべての年齢層において過去最高レベルで高くなっています。
このあたりは、10月刊の『普通に働け』(イースト新書)に詳しくまとめていますのでご期待ください(アラサーくらいをターゲットにしていますが、就活を始める前に、あるいは社会人になる前に読む本としてもオススメです)。

「自分の意見が通らない会社、好きなことができない会社なんてやめちゃえ」という話になるわけですし、そもそも入社した後は何をさせられるのかが日本の雇用契約なわけですが。
とはいえ、やらされた仕事、理不尽なことを楽しみ尽くすのも、矛盾するようですが、企業社会の魅力ではあります。
別に夢がなくても、目指す目標、クリアしたい課題があれば働く人生は楽しいのではないかと思う今日このごろです。

いや、私は、夢はありますよ。
そのための覚悟も、努力もしていますよ。
ただ、才能もなく、努力もしない人が自意識過剰で夢に振り回されて人生こじらせるのは、痛いとしか言いようがないわけで。

大きな夢を描いているアナタこそ、ぜひこの本を読んで人生を考えてください。
やらされることを自分流のやり方で楽しみ尽くす人生も楽しいものですよ。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。