メタルでOBOG訪問もエントリーシートも楽勝?ヘビーメタル専門誌『BURRN!』に学ぶコミュニケーション能力アップの極意

2013.9.13  1587Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。

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メタル雑誌、『BURRN!』の魅力とは?


突然ですが、皆さんは『BURRN!』という雑誌をご存知ですか?



ヘビーメタルの専門誌です。 
1985年に創刊されたこの雑誌は、現在もヘビーメタル雑誌はもちろん、洋楽雑誌においても国内NO.1の売上だそうです。

80年代~90年代にかけて10代、20代を送った私は、この雑誌はよく読んでいました。
最新号に載っている編集長のコメントによると、ちょうど97年が部数のピークだったとか。
とはいえ、雑誌不況が伝えられる中、メタルファンを中心に絶大な支持を集めていますし、それ以外の人からも独特の雑誌として注目を集めています。

私もずっと読んでいるのですが、この雑誌の魅力といえば、メタルファンにとってはたまらない独占インタビューやライブレポートが多数載っていますし、さらには過去の名盤や、あるアーチストを徹底的に振り返る特集も魅力的です。

もちろん、批判の声もあります。
表紙や特集に載るアーチストがマンネリ化していないか、明らかにえこひいきされているアーチストがいるのではないか、レビューの点数にかなり編集部員の好みが反映されていないか、などの声です。まあ、これが同誌の魅力でもあるのですけどね。

とはいえ、賛否両論呼びつつも注目度の高い雑誌ですし、雑誌不況の中、またCDが売れない時代と言われる中、人気を集めつつ残っているのはスゴイことだと思います。


『BURRN!』から学ぶ、効果的なコミュニケーションとは?


『BURRN!』を読むたび、私は胸が熱くなるわけですが...。
もちろん、メタルというジャンルを扱っているということもありますが...。
なぜ、この雑誌は熱いのでしょうか?


個人的な答の一つは、「効果的なコミュニケーション」これに尽きると思っています。
インタビュー自体、実に効果的なコミュニケーションが行われていますし、ライブレポートも解像度高く物事を捉えています。
そして、そこで得た情報を実に的確にアウトプットしています。

より具体的にお伝えしましょう。
まず、インタビューですが、事前準備に力を入れていると感じます。
本人でも忘れていそうな事実、一部のファンしか知らないけれどもアーチストにとっては大事な事実などをしっかりぶつけていくので、アーチストも本音で話すのだと思います。
話の組み立ても見事ですね。

ライブレポートも演奏やパフォーマンスだけでなく、会場の様子をよく捉えているので、具体的なものになるのです。
事実を丁寧に観察しているわけです。
しっかり音源を聴いて予習しているのでしょう。
だから、曲ごとの聴きどころ、パフォーマンスで注目するポイントなども予想できるのでしょう。

そして、それを文章に落としこむことが実に絶妙にできています。
先ほど、私は「熱い」と書きましたが、本当は「熱い」と書くだけでは熱さは伝わらないのです。
『BURRN!』は、事実を淡々と書いているからこそ、ライブ会場の熱や、ミュージシャンの想いが伝わるのです。

これは、就活のOB訪問や、会社説明会への参加、およびエントリーシートなどにも通じる話ですね。
予め聞きたいこと、観察するポイントを考えていないとOB訪問や、会社説明会への参加は効果的なものになりません。
エントリーシートも同様で、「私はアルバイトを一生懸命がんばりました」なんて書かれても、何も言っていないのと一緒なのです。

一度、一生懸命という言葉を手放して、行動の動機、役割、程度、成果、変化などを事実、数字で表現した方が一生懸命さは伝わります。

さて、メタリカが表紙の今月の『BURRN! (バーン) 2013年 10月号 』ですが、同バンドのインタビューとライブレポート、現編集長広瀬和生氏と以前、編集部にいた増田勇一氏の対談など魅力いっぱいです。
ここで書いたようなことがよくわりますよ。
また、広瀬氏と増田氏の対談はメディア論として面白いと思います。

まあ、興味のない人には抵抗があるかもしれませんが、これがなぜ売れるのか、支持されているのか、効果的なのかなどは、逆に興味のないものほど、分析する視点が磨かれるとも言えます。
気が向いたら手にとってみてくださいね。
 

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。