「採用実績がないからウチの大学からは無理?」受ける人がいないという答えも

2013.1.11  4597Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


かなり遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。






「なぜ、採用実績がないのか?」と東北大生は質問した




年明け早々、合同説明会での講演などをしております。
今年の講演初仕事は、大学生協さん主催の東北大生を対象としたイベントでした。
仙台に行ってきましたよ。想像以上の来場者数でびっくりでした。


私の講演には100人くらい参加していましたかね。
東北大の学生は真面目ですね。
採用担当をしていた頃のことを思い出しました。


講演終了後も沢山の質問を頂きました。
中でも印象的だった質問がこれです。経済学部の学生からの質問でした。


「物流業界に行きたいのですけど、採用実績がないようなのです。ひょっとして差別されているのでしょうか?」


なるほど、そういう風にとりましたか。
採用実績がない(より正確に言うと、入社実績がない)のは、大学名で差別、区別されているのではないか?と不安になっているわけですね。


この場合で言うと、差別・区別というよりも
「応募者が少ない」
というのが一つの答ですね。より正確には合格者ですが。


まず、東北大学は企業が採用ターゲット校とする大学です。
東北大に限らず、旧帝大の学生は、なかなか採れないわけです。
大学生の「質」に関する不安がある中、旧帝大ならと人事は考えるわけです。
昔も今も東北大は学生がよく勉強していて、ピュアであることが評価されています。


採用実績がないのは、応募者がいないというのが一つの答ですね。
大学のランクが上がれば上がるほど、広い意味でのサービス業に行く人が少なくなる傾向があります。
私も物流の会社をお手伝いしたことがあるのですが、実際、旧帝大クラスからの応募は少ないのですね。
もっと言うと、仮に内定が出ても辞退するのですね。
仕事の面白さにひかれつつも、勤務条件などを考えて最終的に辞退するわけです。
行く気満々で受けていても、いざ内定が出た後、ゼミなどの仲間の内定先を聞き、羽振りのよさそうな話を聞くと考えてしまうわけです。
これもまた現実です。




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大学ごとの進路には、やはり傾向があるのだけど




「ウチの大学は金融に強い」
「あの大学は流通に強い」


こんな話をよく聞きます。
大学のホームページや入学案内などを見ると、進路の傾向がまとまっているわけですが、たしかに大学ごとに特徴はあります。
なぜ、大学ごとに傾向があるのか?
これはなかなか深いですね。


もともと、その業界に強いと聞いて入学してくる(早稲田はマスコミに強い、中大は資格試験を必要とする仕事に強い、など)という要因もあれば、入学してから先輩の進路に影響を受ける、その業界が採用ターゲットとしているのでそうなる、などで再生産が行われているとも言えます。


もう1つ注意しなければならないのは、偏差値が高ければ無敵というわけでもありません。
業界、職種によっては、賢さよりもホスピタリティを問うこともあるわけです。
この部分は、旧帝大などの学生は弱いと言われている部分であります。


なお、企業ごとの採用実績は東洋経済新報社の『就職四季報』や、就職ナビに掲載されている求人広告などで調べることができます。
キャリアセンターに行くと、過去に合格者がいるかどうかも分かりますし、大学によっては選考のやり方なども整理されていますので、調べてみる価値ありですね。
もちろん、自分の大学から内定者がいなくても、同じくらいの大学から出ていれば可能性があるわけですが。


本題に戻りますけど、ある業界・企業に自分の大学から内定者がいないのは(特に上位校なのに内定者がいないのは)そもそも論で「受ける人がいない(少ない)」「合わない」というのも一つの答だと言えそうです。


時代は少しずつ変化しています。
自分が前例という気概を持って、あまりOB・OGがいない業界を目指すのもありですよ。


大学ごとの進路の傾向はなかなか深いので、まずは自分の大学の実績を調べてみてくださいね。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。