就活で「満足」学生と「非・満足」学生の違いとは?

2012.10.19  2877Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


しばらく更新をお休みしていましたが、今週から週1回くらいのペースで記事を書いていきますね。


さて、今回はこちらです。




やっぱり違った、行動パターン




先輩から面白いデータを教えてもらいました。東証マザーズ上場のネットリサーチ会社株式会社クロス・マーケティングが株式会社スローガンと行った「2013年卒業予定者の就職活動実態調査」です。


調査概要はこちらです。レポートからの抜粋です。


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調査手法 : インターネットリサーチ
調査対象 : 2013年卒業予定の大学生、ならびに大学院生で、就職活動を経験した学生
調査協力 : スローガン株式会社 
※MARCH以上の登録者が8割を占める、優秀層に特化した新卒採用サイト「Goodfind」 の運営ならびに採用支援企業有効回答数 : 165サンプル
◆男女比率 : 男性78.8%、女性21.2%
◆文理比率 : 文系67.3%、理系31.5%、その他1.2%
◆学部修士比率 : 学部生70.3%、大学院生29.7%
◆平均内定取得数 : 2.4社
◆就職活動の結果に満足しているかどうか :
とても満足している(33.0%)、やや満足している(41.8%)
 ⇒これらを「満足層」として分類
どちらともいえない(14.5%)、あまり満足していない(4.2%)、まったく満足していない(6.1%)
 ⇒これらを「非・満足層」として分類

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ポイントとして次の5点がまとめられています。こちらもレポートから抜粋します。


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1.事前準備に力をいれたのは、満足層は「面接準備」、非・満足層は「業界研究」。
満足層に比べて、非・満足層が通過を難しいと感じた選考過程が「面接」だったことから、書類ではなく面接での事前準備にどれだけ力を注げられるかが成功のカギとも言える。


2.「OBOG訪問」「会社説明会」「選考への参加」については、満足層は非・満足層と比較して開始する時期が早く、年内に企業や社会人と接点を持つ行動を多くとっていることが特徴。


3.購入した本で、非・満足層は、特に「ビジネスマナー本」「自己分析本」「業界研究本」の購入率が高い一方、満足層は書籍に頼りすぎない就活をしている。


4.書類・面接での自己PRネタでは、満足層は"学内活動(留学含む)に関わるもの"。
非・満足層は"学外での活動(アルバイト、ボランティア)"。 


5.就活の相談相手は、「友人」「家族」と共に、「就職活動で知り合った社会人・友人」が満足層の特徴。
就職活動という限られた時間で相談できるような関係性に発展させられるかが分かれ目。


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ややサンプル数が少ない上、ここで言う「満足層」の割合が7割強、「非・満足層」が3割弱というのが気になっています。
それを前提としつつも、結果だけを見るならば、薄々感じていたことのいくつかが可視化されたデータだと言えます。




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以下、個人的な感想です。


意外だったのは、「業界・企業研究」に力を入れていた人が満足層よりも非・満足層の方が多かったことです。
ただ、もともと満足層が多く、平均内定社数も2.4社と多め。
もともとニュースなどに接し、業界・企業研究を進めていた層なのではないかと想像しました(推測でしかないですが)。


OB・OG訪問を早めに行なっていた人が、満足層に多いというのは納得です。
昔も今も、OB・OG訪問で業界・企業・職種についてリアルな情報をつかむこと、社会人の実態を知ることは納得のいく就活をしている学生に共通する点です。
ただ、OB・OG訪問というのはここ数年のデータでみても、だいたい4割くらいの学生しか実施していないのですけどね。


就活本に関するデータでは、就活ガイド本を書いてきた立場で言うのはあれですが、でも本音として、満足のいく就活をしている層はそもそも、社会人や大学の先輩、周りの仲間や、ネットで情報を収集しており、就活本を必要としていないのですよね。


ただ、むしろここではこのサマリでは触れられていない、SPI本は満足層も非・満足層も購入しているという事実に注目したいです。
大学生協でも売れるのですよね、SPI本。
そして、有名大学(特に私学ですが)の学生もSPIに対する苦手意識が高いのもまた事実です。


満足層は学内活動についてアピールしており、社会人に相談しているというのも納得です。
学生や採用担当者にヒアリングすると「学生時代に力を入れたこと」ではなく、「勉強で力を入れたこと」「成績について」という質問をする企業が増えつつあると感じます(定量化はできていませんが)。
ただ、ここでよく就活による学業阻害が言われるわけですが、満足層はとはいえ、うまく両立しているなと感じます(あくまで体感値ですが)。


社会人と会っている、大学生活が充実している人は就活に強いと再認識した次第です。




何が重要か、何が重要ではないかをまず知るべき




さて、話はやや変わりますが、この1ヶ月、大学でのキャリア・ガイダンスで講演する機会や、テレビ番組の収録などがあり、その際に学生からの質問、相談をよく受けました。


まあ、毎年感じることですし、まだ就活についてリアリティがわかないのでしょうし、不安も大きいことでしょうからしょうがないのですが、申し訳ないですが、就活のことも世の中のこともまるでわかっていないわけですね。


これは、毎年、参加者がほぼ入れ替わる新卒一括採用の弊害といえば、弊害ですし、一方、就活対策という話をこえて、世の中の経済活動の現実は知っておくべきだとも思います。
よくあるパターンが、就活とドラクエを勘違いしている人です。


どういうことか?


それは、このアイテムと、このアイテムが揃っていたらラスボスと倒せると思っている人です。
より具体的に言うならば、「どのバイトが有利なのか?飲食じゃだめか?」「TOEICは何点とれば有利なのか?」などの「有利・不利」トーク、そして有利なものが揃えば内定が出ると思っている人です。


まあ、就活に限らずですが、この「有利・不利」トーク、たまに残念に感じるのですよね。


大学入試と違い、よくも悪くも就活で問われていることはアナログでいい加減です。
この是非は議論の余地がありますし、私も、採用基準、特にある属性の人(例えば大学名、学部・学科名などによるもの)を最初から採る可能性がないなら開示するべきだと思うわけですが。


この「あり方」をめぐる議論は重要ですが、一方で学生はいま、そこにある就活を乗り切らなければなりません。
そのためのヒントは、やはり経験者、つまり社会人と先輩に学ぶことなのですね。
この満足層、非・満足層の違いに代表されるように、やって意味があること、意味がないことがあるわけですよ。


まず怖がらずに現実を見る。
何が大事で何が大事ではないのかを知る。
そのために、まずは社会人、先輩に会いにいきましょうか。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。