2014年度新卒採用、倫理憲章はどうなるか?

2012.7.18  3908Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




今の3年生も就活は12月から、なのか?




「経団連は2014年度の倫理憲章について発表」と、2012年7月18日付の日本経済新聞が報じました。


2014年度入社対象の「採用選考に関する企業の倫理憲章」について(一般社団法人 日本経済団体連合会)


就活、14年度入社も12月から 経団連がルール維持(日本経済新聞) 


結論から言うと、2013年度と同じということですね。
大学生の場合、会社説明会などの広報活動は3年の12月1日から。
面接など選考の本番は4年生の4月1日以降に始まり、正式な内定は10月1日以降となります。


この件自体は、既定路線です。


昨年の暮れ、2011年12月20日付の朝日新聞朝刊が報じたところによると、経団連の米倉弘昌会長は昨年12月19日の定例会見で、採用のルールを定めた倫理憲章について、「何年ごとに見直すとか、いまは考えていない」と明言していました。 
米倉会長は12月スタートとなった現状について「このぐらい忙しくてもよい」と発言し、現状で問題はないとの認識を示しました。
この時の報道では、各社の話を聞いて問題点を調べるのに「数カ月かかる」(経団連 幹部)とのことで、倫理憲章を再改定するとしても、適用は早くて再来年になると報じられていました。


では、このルールはちゃんと守られるものなのでしょうか?


結論から言うと、そうではありません。


この報道では就活の早期化・長期化抑制のために一定の成果が出たとされていますが、実際は、Facebookでの告知を大手企業が大学3年の夏に相当する時期に始める、キャリア支援イベントという名目でアプローチする、OB・OG訪問を受け付けるなど、グレーな活動が行われていたことは明らかです。


フライングして内々定を出した企業ももちろんあります。
水面下でのアプローチを重ね、4月1日に内定を出すのも常套手段です。


法的拘束力がないので、正直者がバカを見るということになっています。
倫理憲章というのは高校野球の選手宣誓のようなものです。
みんなが正々堂々と戦うことを誓いつつも、デッドボールや敬遠が乱発される、それと一緒です。
外資系企業やベンチャー企業はもちろんサインしておらず、かなり早くから採用活動に取り組みます。


2014年度についても、実際は「キャリア支援」という名目で、1年生~3年生を対象に(参加者はほぼ3年生)、その場では個人情報をとらないイベントが多数開かれています。
このようなイベントを運営している就職情報会社によると、昨年は参加をためらっていた大手企業から今年は申し込みが相次いでいるとか。
同じように、Facebookページなども既に開設されています。
ファーストリテイリング(ユニクロ)のように、大学1年生を選考の対象とする企業も現れています。


ルールの継続を宣言しつつも、事実上、自壊していくのではないかと私は見ています。




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企業と学生は早いスタートを望んでいる?




では、企業、学生、大学はどのように考えているのでしょうか?


HR総合調査研究所が調べたデータが興味深いです(ちなみに、大学はキャリアセンター、就職部を対象にしています)。
あるべき採用広報開始時期について質問したところ、企業と学生においては大学3年の10月がトップで、それぞれ31%、34%が支持。大学も19%が支持しており、最も票を集めた12月スタートの22%と僅差となっています。




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早期化・長期化も問題ですが、短期でバタバタするのも大変というわけですね。
また、これだけ就職難だと学生も気にして勝手に始めるのですよね。
企業の側も早期接触した方が得と考えるわけです。


この4つの記事を参照して頂きたいのですが...。


NEWSポストセブン|就活中継 「いい学生」と「普通の学生」の差別が可視化と専門家 


企業の就職ナビ離れが加速中...?新卒採用における変化とは


「就活は大変だ」報道の功罪、就活の現実を冷静に見よう


「就活」は「共通言語」ではない?




みんなが早期化・長期化で苦労しているかというと、上位校は早期で内定が出るので、あまり困らないわけです。
「理系はさすがに学業を阻害するだろ」という意見もあるのですが、たしかにそうなっているものの、理系はそもそものエントリー数が少なく、上位校の学生は争奪戦になり、あまり困らないのですよね(もちろん、本人の能力・資質と、学科によりますが)。


また、みんなが就職ナビで就活をしているか、採用活動をしているかというとそうではありません。
こういう現実に気づくべきですし、大人たちももっとオープンに知らせるべきです。


ずっと言っていることなのですが、就活の時期は今後、もっと自由化してもいいと思っています。
応募条件をよりクリアにすること(あなたの力じゃ無理、その大学からは厳しいと明示することも含んでいます)、出会う手段を多様化すること(特に大学と企業が直接つながる仕組みをつくること)、決まらない学生への斡旋機能を強化すること(その際に、企業の実態をクリアにし、ブラック企業に押しこむような状態にしないこと)、大学の入学と卒業の要件を厳しくすること、大学を機能分化し職業教育(キャリア教育ではない)を強化することが鍵だと考えています。


皆さんはどう思いますか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。