ソー活のウソ!?学生は企業のFacebookページを全然見ていない

2012.6.27  1463Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。


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「ソー活」が話題になったけど




2013年度採用で話題になった言葉といえば、「ソー活」です。
ソーシャルメディアを活用した双方向の就活ですね。


思えば、昨年の今頃くらいから「これからはソー活だ」「企業も学生もFacebookだ」「海外ではこれが当たり前」などの声がよく聞こえてきました。
一部の企業と学生は頑張っていましたね。


2013年度採用もまだまだ続いていますが、中間総括をしてみましょうか。




HR総合調査研究所が発表した「2013年卒就職活動状況調査」を元にレポートしましょう。


結果はこちら。


◆閲覧したfacebook採用ページ


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※データ元:HR総合調査研究所「2013年卒就職活動状況調査」
(調査主体:楽天「みんなの就職活動日記」(協力:HR総合調査研究所)/調査対象:就職活動中の大学生・大学院生/有効回答数:3910名/調査方法:WEBアンケート/実施期間:2012年4月23日~5月2日)




なかなか衝撃的な結果ではないでしょうか?
見たことがない人が文系、44%、理系63%。
予想以上に少ないですね。文系、理系ともに9割は6社以下です。


理系が少ないのは、就活にかけられる時間が少ないからなどの理由も考えられますが、とはいえfacebookは理系へのアプローチに強いと思われていたので実に意外です。


あくまで推測ですが、これだけ閲覧社数が少ないということは、覗いた企業も元々有名な大手企業中心であることも考えられます。


実態はこんなもんです。




「ソー活」はオワコンなのか?




もちろん、他社からはもっと利用率が高いというデータが出ていたりもします。


調査対象によっても違いますからね。ソーシャルメディア大好きな人たちを対象にすると、そりゃあ高くなるでしょう。
Facebookを活用している層は激しく活用し、企業情報の収集や、先輩や学生との交流、企業へのアピールに活用していました。


私は今回のデータは、「ごく普通の学生」に関してはこうなったという結果だと解釈しています。
このデータでは学校群ごとのデータは出ていませんが、学校群ごとの差ができていたのではないかと予想しています。
ここ数回でレポートしていましたが、就活は激しく分化が進んでいるのです。


では、ソー活はオワコンなのでしょうか?
そんなことはありません。むしろ、これからますます定着していくでしょう。
というのも、Facebookがインフラと化してきているからです。
ホームページを開設するのが当たり前になっているように、企業の窓口の1つとして取り組むものになっていくわけです。


ただ、企業が元々Facebookページに期待していることが実現できるかということ別問題です。
2013年度採用において企業がFacebookページに期待していたことは、ホンネの部分で言うならば


1.優秀層にアプローチできること
2.倫理憲章を破ることができること
3.話題になるから


という理由でした。


ユーザー層が幅広くなっている分、当初の、特に1の目的を達成するためのツールとしては魅力が薄くなっていくことでしょう。
早い段階からソーシャルメディアを活用した採用に取り組んでいた企業の採用担当者は「明らかにFacebook経由で集まる学生の顔ぶれが変わった」と語っています。


とはいえ、個と個がつながるツール、特に学生と社会人、学生と学生がつながるツールとしてますます定着していくのではないか、人と人とのつながりを加速する部分は期待しています。
まあ、実際は学生同士のつながりで言うならば、何か前提条件が一緒の人、つながるタグがある人中心になっていくでしょうけどね。


これは就活というくくりをこえて言いますが...。
社会学、メディア論などを研究している学生にとって、ソー活をめぐるこの1年くらいの盛り上がりとそれをめぐる言説、実態とのズレは研究対象として極めて面白いと思いますよ。


今年も新しいトレンドはいくつか現れることでしょう。
単に踊らされるのではなく、本質を見ること、冷静に考えて見ることを大事にしてくださいね。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。