『愛されるアイデアのつくり方』いい仕事って何だろう?

2012.5.11  1077Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




あの消臭力CMの仕掛け人はどういう風に仕事をしているのか?




就活の神さま~自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え~ 』(WAVE出版)でお世話になった編集者の田中泰さんから、
鹿毛康司さんの新作『愛されるアイデアのつくり方 』(WAVE出版)を頂きました。


ありがとうございます。


田中泰さんは今まで仕事をしてきた編集者の仲で最も熱い仕事をする方の一人です。
正直、『就活の神さま』は難産でした。


いや、どの本も難産なのですが、田中さんが私の原稿になかなかOKを出してくれなかったのです。
彼は極めて腰が低く、ソフトな方なのですが、仕事にとても厳しい方なのです。
企画書も数回出しましたし、原稿はもう何度も書き直し、それこそ累計40万字くらい書きました。
何度も議論をし、最後まで妥協しませんでした。


鹿毛康司さんは、現在、エステーの執行役宣伝部長を務めています。
日本中を感動させ話題になった消臭力のCMを始め、数々の話題のCMを世に出してきた方です。
昨年はついに、CM好感度ランキングで1位を取りました(それまでも、数々のCMを上位に送り込んできました)。
同社の広告宣伝予算は、大手企業なみから言うと、少ない方であるにも関わらず、です。


以前も早稲田大学でのパネルディスカッションでご一緒させて頂いたり、成城大学の就業力育成支援講座で特別講演をして頂いたりとお世話になった方でした。
ちなみに、成城大学での講演では何人もの学生が眼に涙、でした。


私が尊敬する2人の本ですから、面白くないわけがありません。
期待を胸に、今日、通学中の(そう、私は大学院生なのです)中央線の中で読みました。


皆さんに言っておきます。


この本、電車の中で読むのは禁止です。
冒頭からウルッとくる話がいっぱいでしたが、新宿~武蔵小金井間はずっと涙と鼻水が止まりませんでした。
以前、『就活の神さま』をお届けした時に、鹿毛さんは150ページくらい読んだところで感動したそうで、電話を頂いたのですが...。
今回、私もそういう気分だったのですが、電車に乗っていたので電話できず、やや悔しかったです。
電車を降りてすぐに鹿毛さんと田中さんに電話をしたのでした。


いやあ、素晴らしい本です。
ありがとうございました。


この本は、カリスマ宣伝部長の仕事に取り組むスキルとマインドを惜しげもなく公開した本です。
あのユニークな、人を魅了するCMはなぜできるのか?
なぜ、彼のアイデアは人々を惹きつけるのか?
その秘密が分かる本です。


そこで大事なことは「愛される」ということ、そのために「愛する」ということです。
徹底的にお客様に向きあうこと、お客様に対して上から目線にならずに目線をあわせることなど、大切なことは何かを考えることなど、言葉にすると簡単でもなかなかできないことを具体的に説明しています。
とにかく、誠意に満ちた仕事ぶりと愛に満ちた文体が素敵です。
愛のある仕事、いい仕事とは何かがよく分かる本です。




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仕事で大切なことは実にベーシック




この本は印象的なエピソードに満ちています。


消臭力のCM誕生秘話も、雪印乳業時代に集団食中毒事件の後に、謝罪広告を出したり、お客さんに謝罪に行った話などももちろん印象的なのですが、あえて紹介したいエピソードは、「エステーさんなら自由に仕事ができる」と思ってやってきたクリエイターたちの売り込みに対して、お断りをしたというエピソードです。
これ、大事なポイントなんです。


エステーさんは、お客さんにとってベストなCMとは何かを考え、仕事をしているのであって、別に自由に仕事をしているわけではありません(もちろん、発想などは自由そのものですが)。
お客さんに愛されるということ、ここからぶれて、自分のエゴで仕事をしてはいけないのです。
非常に印象的なポイントでした。


もう1つ、これは彼のセミナーでも聞いた話であり、あとがきにも書かれていたことですが...。


"自分は一流になれるかどうかは、わからない。
でも、ちょっと努力すれば一流の人に会うことができるレベルにはなれる"


という話が非常に印象的でした。
社会人になる、会社員になるということの魅力とはそういうことだと感じました。


私自身も別に一流の人間ではありません。
人材コンサルにしても、執筆にしても、大学の講師にしても、私よりデキる人はいっぱいいます。
もちろん、大企業で会社員をしていたときも、です。
でも、一流の人たちと会えるレベルになるよう努力して、揉まれて成長してきました。


他にも、仕事っていいな、会社っていいなって思う話がいっぱいです。
世の中には会社や仕事に関する暗い話もいっぱいですが、この本を読んで、愛される仕事をするとはどういうことか考えてみませんか?


久々にお二人に会いたくなりました。
素敵な本を、ありがとうございました。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。