「就活は大変だ」報道の功罪、就活の現実を冷静に見よう

2012.5. 8  1857Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




就活報道はワンパターン




先日、BSフジの「COMPASS」という番組にゲスト出演しました。


視聴者、からもソーシャルメディアで意見を集め番組で紹介、スタジオだけでなくスカイプで参加するゲストもありという、なかなか実験的な番組です。
飯田泰之先生、海老原嗣生さんと一緒でした。


実は番組では初共演の海老原さんのご意見はもちろん、やはり初共演の飯田先生のご意見が非常に現実的で印象的でした。


終了後、お世話になっている大学職員の方からメッセージが届きました。


「出演者の方の意見は大変面白かったです。
でも、番組の構成自体が、よくある"就活は大変だ、かわいそうだ"という光景で、逆に学生を萎縮させてしまうのではないかと心配になりました」


そんな内容でした。


わかります。


今回の番組ですが、海老原さんや私で事前取材に対応したものの、結果として出てきた流れ、事前に用意された映像、テロップなどは、よくある「就活かわいそう番組」の構成そのものでした。


明るい材料も結構お伝えしていたのですけどね。


ずっとこのコラムでも書いていることですが、メディアはかわいそうな話が大好きです。
番組でも言いましたが、合説に集結する学生、何社も起きて疲れている学生の光景ばかり取り上げます。
それもまた、就活の事実ではありますが、ゆっくり取り組んでいる人、あまり取り組まずに内定した人、これから始める人などがいるのも事実です。


就活かわいそう報道は、実際の就活は多様化しているのに、型にはまった部分だけ取り出して、その型を再生産したり、学生を萎縮されているのもまた事実ではないでしょうか。




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例えば「何十社も受けて内定が出ない」ということについて




「就活の現実を冷静にみよう」


私が再認識したことです。
大変なのは事実ですが、真っ暗ではありません。


求人が回復傾向であること、まだ終わっていないし、まだまだこれからであることなどは今後書きますが、今日はよくある「就活かわいそう」言説について考えてみますね。


この手の報道では「何十社も受けたのに内定が出ない」ということが紹介されます。
実際、私も100社エントリーして内定が出ない人を何度も見たことがあります。
そんな事実もあることから、この言説は一定の説得力を持ってしまいます。
しかし、冷静にみてみましょう。例えば、マイナビが毎月発表しているモニター調査をご覧ください。


4ページ目に平均エントリー数の累計が出ています。
13年度は3月時点で62.7社ですね。
スタート時期が遅くなったものの、たしかに前の年よりも減っています。
ただ、この「エントリー」ですが、実は「プレエントリー」つまりナビサイトなどでぽちっと押したことを含めてカウントしています。


また、2/3はナビサイトオープン月に集中しています。
つまり、ナビがオープンしてとりあえずプレエントリーしたというものがかなり含まれています。
そういう会社に全部会社説明会に参加したり、エントリーシートを出すわけではないですよね。
そして、時間が経つにつれて1ヶ月あたりの平均エントリー数は減っていきます。


まぁ、実際、たくさん応募して落ちる人も見かけるのでこのデータは「たくさん受けても内定が出ない」ということを確からしいものにしているわけですが。






就活に関しては明るい兆しがいっぱいです。
現実をよく見て、悲観しすぎずにいきましょう。




執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。