「なぜ、読んでも失敗するのか?」ビジネス書と就活マニュアル本の謎

2012.3. 2  1887Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




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あのカツマーたちは年収10倍になったのか?




ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書) 』(漆原直行)を献本して頂きました。
いやー、面白かったです。


そして、ジェラシーを感じました。


昨年の春に発表した『「キャリアアップ」のバカヤロー 自己啓発と転職の"罠"にはまらないために (講談社プラスアルファ新書) 』で、ビジネス書を読んだり、異業種交流会に参加してもいまいち仕事ができない人のことを描いたのですが、ビジネス書とそれを書く人、読む人の研究という意味で、かなり突っ込んだことを書いているからです。


あ、拙著『「キャリアアップ」のバカヤロー』も最近、すごい勢いで再評価されていて、よく編集者さんからは「出るのが1年早かった」と言われています。
代表作の1つだと自負しておりますので、ぜひ手にとってくださいね。


漆原さんの新作ですが、ビジネス書の歴史やパターンを読み解いたり、ビジネス書産業のからくりについて紹介したり、ビジネス書との付き合い方について学べたりと内容、盛りだくさんでした。


拙著にも書きましたが、私も20代後半〜30代前半はビジネス書を読んで自分磨きに励んだ時期がそれなりにありました。
もちろん、これによってモチベーションが上がったり、仕事が上手くいくようになったこともありましたけど、結局、仕事そのものに真剣に取り組むことが一番成長につながるんですよね。


ビジネス書を読んでも仕事をできない人を、私もたくさん目撃してきました。
そういえば、勝間和代さんの『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法 』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売されてから、もう5、6年経ったわけですけど、あの頃、あの本を読んでいた人の年収は今、いくらくらいなんでしょうね?
10倍の人はほぼいないでしょう。


いや、今の状況から言うと定期昇給分(これも見直されていますが)以上に上がっていたら御の字でしょう。


ビジネス書を読んでも、自分にフィットするかたちで実践しないとまったく意味がないのです。




就活マニュアル本で内定は出るのか?




就活生の皆さんにとって、身近なのは就活マニュアル本でしょう。
たくさんの会社から、実に様々な本が出ています。
マニュアル本は嫌いなのですけど、結局、そのジャンルにくくられる本を私もたくさん書いてきました。
就活の心構えから、自己分析や業界・企業研究、SPI対策など各種分野別の対策本、問題集、ワークブックなど実に多様な本が出ています。


ただ、書いている本人が言うのもなんですが、これらの本を読んでも内定が約束されるわけではありません。
皆さんも薄々気づいていますよね?


就活マニュアル本を読んでも内定が出ない理由は、ビジネス書と極めて似ています。




◆読んだだけで、理解できていない。ましてや実践していない。


◆そのまま真似しようとして、自分のものになっていない。


◆書かれている内容は、前の年までの就活をもとに書いていて、その年の就活とはちょっとずれる。


◆言いっ放しの精神論で、一瞬モチベーションは上がるが、具体的な行動につながらない。


◆就活テクニックは上がるが、結局、働くのに必要なマインドと能力が足りなくて苦労する


◆マニュアル本自体、採用担当者に読まれており、対策されてしまっている。


◆みんなが参考にしているので、ESでも面接でも同じようなことを書く人、言う人ばかりで見破られてしまうし、差がつかない。




言い出すときりがないですが、こんな感じでしょうか。


もちろん、何をするにしても最初は「型」が必要です。
ピアノだって、ほぼ必ずバイエルから始まります。
型がどんなものかを知る参考にはなるでしょう。


就活マニュアル本で身につくのは就活スキルです。


採用される人に必要なのは就業力(社会で活躍するために必要な力 例えば地頭の強さ、心の強さ、広い意味でのコミュ力)×就活スキルなんですね。
結局、就業力が高まらないとダメなのですよ。
また、自分はどうすればいいかを考えなくてはなりませんよね。


というわけで、ビジネス書の話から、ふと就活マニュアル本のことを思い出しました。






そうそう、就活の栞が本になり、『困ったときに本当に使える 就活のヒント100 』(マガジンハウス)として好評発売中です。
いままでありそうでなかった、先輩たちの体験談を元にした本当に役立つ就活ガイドです。


別にこの通りやれだなんて口が避けても言えません。
でも、参考になる本なので、読んで頂きつつ、自分はどうすればいいかを考えてください。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。