驚異の内定率を誇るゼミの秘密、あなたの先生は就活に熱心ですか?

2012.1.23  1667Views

みなさん、こんにちは。常見陽平です。




7年間で未内定者は3名。内定率約95%のゼミの秘密とは?




先日、ある女子大の教授を取材しました。


郊外にある女子大で、偏差値は40くらいです。
でも、その大学自体の内定率は全国平均と比べて極めて高いのです。
よくある、就職希望者から進路変更した人を抜いて計算するごまかした値ではなく、リアルな数字を教えてもらいました。
ここでは書きませんが、驚異的な数字ですよ、えぇ。


中でもその教授のゼミは過去7年間トータルの内定率が約95%だとか。
3人だけ正社員として就職できなかった人がいますが、それぞれ進路は決まりました。
イマドキの現実から言うと、極めて高い実績だと言えます。


ポイントはなんでしょう?
いくつかご紹介しますね。


まず、そもそもこの大学は少人数の大学で、1年生の頃から20人以下の講義が多く、読み書き聞き話す、そして考えるということを繰り返すわけですね。
毎回の講義で全員が当てられるのだそうですよ。


キャリア教育プログラムも大学1年次から行われます。
特徴的なのは、「死」について考える時間をしっかりとることです。
「死」ということを意識すると、人生に対する考え方は変わる、と。


そのゼミなのですが、経営者が書いた本を輪読し、他にもプロジェクトを行うのが主な活動です。
あえて経営学の理論の本ではなく、経営者が書いた本にしているそうです。
その方が具体的で理解しやすいという理由からです。
さらに、講義の途中にその本を書いた経営者が登場します。
「すごい人」と会った体験というのは、若者に大きく影響を与えるのですよね。
一気にモチベーションが上がるそうです。


そのゼミでは、就活が始まる前に、教授がゼミ生を面談します。
学生の考えに耳を傾けつつ、アドバイスをします。
特に、CA(キャビンアテンダント)など憧れ就活に走りがちな学生に対しては、やんわりと仕事の厳しさ、入社後のギャップなどを伝え、憧れだけで選ばないように指導します。
そのゼミの学生は教授のアドバイスのもと、企業選びをし、主に準大手の優良企業と、大手企業の関連会社に決まっているとのこと。
安定していて、待遇もよく、彼女たちに合った企業群なのだとか。
大手企業の内定者も結構な割合でいます。


さらに特徴的なことは、総合職率が高いことです。
今年の4年生は6割が総合職だとか。
教授によると、今や一般職の方が狭き門であることや、徹底的にコミュ力を鍛え、考える力を磨けば有名大学に対抗できるのだとか。


その教授は、就活に対して非常に肯定的であることも印象的でした。
本人にとって成長の機会になる、と。
もちろん、ゼミは厳しく、勉強させられる環境にあるのですけどね。


a1130_000080.jpg




指導教官はキャリア形成支援を放棄していないか?




もちろん、ゼミの教授が就活のサポートをすることについては賛否両論あるでしょう。
ただ、「進路」というのは個人としても大学としても大事ですからね。


ここ十数年でキャリアセンターや、キャリア形成支援プログラムが充実してきました。
もちろん就職予備校化だという批判はあるのですが、この流れは止まらないでしょう。


ただ、大学教職員と話していると、この流れの中で大学の教授たちからは「就活のことはキャリアセンターにお任せ」という空気が出来上がってしまったのではないかという声が聞こえてきます。
ゼミの指導教官は長い期間学生を見るわけですから、面接官や、キャリアセンターにいるカウンセラーよりもよっぽど学生の良いところを知っているはずなのですけどね。


別に選考対策をしろとは言いません。
せめて、本人の希望を聞く、強みを褒めるくらいのことをすればいいのにと思うのは、私だけでしょうか。


ふと、私の指導教官のことを思い出しました。


私のゼミは厳しく、就活中もゼミを休むのは禁止で、もしバッティングしたら日程を変更してもらうか、諦めるかでした。
前も書きましたが、就活が学業を阻害するどころか、私の場合、ゼミがそれ以外の学生生活を阻害していました。
いや、厳しくても楽しかったから良かったのですけど。


そんなゼミだったのですが、毎年、ちゃんとキャリア面談はあったのですよね。
事前にレポートを書き、面談するのですが、多くの場合「お前、本当にそれでいいのか?」と張り手をかまされるわけです。
ぶっちゃけかなり精神的にショックを受けるようなことを言われたりもしましたが、その後、必ずフォローの電話が入りました。
最終的には先生のアドバイスを参考にしつつも自分で決めるのですが、最後は喜んでくれていた様子なのが印象的でした。
ただ、ここも学生、教授それぞれの価値観により違うことでしょう。




あなたはゼミの先生にどう関わってもらいたいと思いますか?


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。