新規事業に新商品、新しい挑戦は楽じゃない

2011.11. 2  859Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




売れるということにこだわること




最新作にして初の青春小説、『就活の神さま~自信のなかったボクを「納得内定」に導いた22の教え~ 』(WAVE出版)が発売されてから1週間が経ちました。
おかげ様で大好評です。
学生さんからは共感できた、小説スタイルだからこそリアルに就活をイメージできた、感動したというコメントを多数頂いております。
著名人からも絶賛コメントが続々です。


嬉しいです!


苦労しましたもん。


何度も何度も書き直しました。軌道修正しました。
最後の最後までこだわりました。円形脱毛症にもなりましたし、身も心もボロボロです。


あ、ちなみに、これは当初の企画書たちです。


就活の神さま企画書画像.jpg


チラリと見えてしまいましたが...。
そう、当初はヒロインとして「さき子」という女子学生も登場する予定でした。
2人の成長物語だったのですよね。
ただ、ページ数が足りなくなったことと、話がわかりにくくなることなどの理由からなくなくカットしてしまいました...。
すみません。イラストまで用意していたのに。


「そんなんでいいのか?」


と言われるかもしれませんが...。
コスト的に成立するかどうか、読者にとってバリューがあるかどうかを考えないといけないのですね。
最終的に320ページになったのですが、当初よりもページ数は60ページくらい増えているわけで、このコスト増をどうするかも悩ましい問題でした。
そして、増えたページを使っても「さき子」のことは描き切れない...。なくなく判断したわけです。


他、ジミーさんをどんなキャラにするかも悩みどころでした。
当初は、クールで、でも熱い、ちょいワル(死語?)な元広告代理店マンだったのです。
ただ、それだと320ページ普通の会話が続き、辛いのです...。
そのため、アフロ、デブ、チビ、オネエ言葉という、やや極端なキャラにしたのです。
ちなみに、当初の原稿ではジミーさんが主人公晃彦をキャバクラに連れ回すシーンなどもありました...。


このような試行錯誤を経て、発売に至ったわけです。


一方で...。
商業出版である以上、「作品」ではなく「商品」であることが期待されます。
出版社からはやはり「売れる」ことは期待されているのです。
いくら高い評価を頂いても、売れなくては読者に届きません。
世の中変えたいと思って本を書いても、読者に届かなくては変わらないのです。
当然、著者としては売れたかどうかで評価されてしまう側面もあるわけです。
売れなければ次のチャンスもやってこないですし。


では、売れているのかどうかでいうと、おかげ様で悪くない滑り出しです。
一部の大型書店ではスゴイ勢いで売れていますし、Amazonでもいつも1000番台にいて、就職ガイドカテゴリでは常にベスト5に入っています。
ただ、決して爆発的に売れているわけではありません。


何が起こっているのでしょうか?


まず、今年は就活の本スタートが遅れているので、就活本全体が前年に比べて苦戦中だという声があります。
そもそも学生が去年ほどは書店の就活棚に行っていないのではないか、と。
学園祭前ですし。そして、就活本は実効性の高いSPIなどの対策本、業界・企業研究本、自己分析本が売れるのですよね。


読んで頂いた方はご理解頂けるかと思うのですが、この本は実は就活本ではありません。
人生で大切にするべきことを訴える小説なんですね。
でも、文芸コーナーにはなかなか並ばない。ビジネス書コーナーも同様です。


つまり、カテゴリー分けしにくいものになっている、と。
書店員さんもどの棚に置けばいいのか分からなかったのでしょう。


でも、おかげ様でいくつかの書店ではプッシュして頂いております。
芳林堂書店芳林堂書店高田馬場店様ではご担当者様からの多大なご尽力により4Fの就職コーナーだけでなく、3Fの一般書・話題本コーナーでも多面展開して頂いております。


就活の神さま(書店店頭).jpg


読者の皆さん、書店員さん、出版社のスタッフの皆さんに愛されているなあと感じます。
ありがとうございます。より広がるように、応援よろしくお願いします。




新しいことは楽じゃない




さて...。今回の取り組みを通じて、ふと大企業に勤めていた頃のことを思い出しました。


何が言いたいかというと、新規事業にしろ、新商品にしろ新しい取り組みは楽じゃないのですよ。


何度か新規事業、新商品担当になったことがありましたが、まぁ、大変でしたよ。
お客さんはもちろん、社内から理解されないこともしばしば。
投資の意思決定をする担当役員や上司を説得できるかどうか。
よく「大企業では新しいことができない!」みたいな意見を見かけるわけですが...。
じゃあベンチャーなら通るかというと、そうでもないですよ。
体力がなければ、ホイホイと投資はできません。
短期の判断はどうだという意見はよく分かるのですけど、とはいえ3年以内に黒字化しない事業には投資はできませんよね。
参入するリスク、逆にしないリスクなども踏まえた上で意思決定します。


案件が通ったところで、今度は社内外に理解を得るのが大変です。
まったく新しい商品・サービスは、理解されないことも。
時には既存の商品・サービスの売上が減ると考えられ、敵扱いされることだってあるわけです。
もちろん、その価値を説明するために担当者は頑張るわけですが。


新規事業、新商品・新サービスなどの中には「予想以上の売れ行きで、在庫が全くなし!」みたいなものがありますが...。
これらのものは、社内からもそこまで売れるとは期待されておらず、予想外のヒットに大慌てというパターンだったりするわけですね。


そして、消えていく新規事業、新商品・新サービスが多数であることは言うまでもありません。
もっとも、成功させるためには、摩擦を恐れずに、前例にとらわれずに、情熱をもってやり切るしかないわけですが。


将来は企業したい、新規事業を立ち上げたい、新商品・新サービスをリリースしたいという学生はいっぱいいますが、新しいことをやるのは並大抵じゃないよということは知っておいて欲しいです。
それでも、やりたいと思うなら、やりきって頂きたいです。
やや話が拡散しましたが、ビジネスにおいて「売れる(そのために売る)」ということは極めて大切であること、新しいことに取り組むのは並大抵じゃないことに皆さんも気づいてください。






最後に宣伝っぽくなってしまいますが...、私の本、よろしくお願いします。
11月8日には出版記念セミナーも開催します。こちらもよろしくお願いします!


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。