あなたは、自分の大学の就活事情を知ってますか?

2011.11. 1  1420Views

皆さん、こんにちは。常見陽平です。




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統計リテラシーを身につけよう




2011年も秋になりました。


2012年度の内定率、2013年度の展望などのデータがこれから日々、発表されていきます。
これらのデータに今後、一喜一憂する機会も多いことでしょう。


まず、注意しておきたいのは、メディアで発表されるデータの根拠です。
統計を少しでもかじっている人にとっては釈迦に説法ですが、いつ、誰に対して、どんな調査を行ったのか、サンプル数は何人かということについて確認するべきでしょう。


就活関連のデータは官庁、メディア、就職情報会社などが発表しております。
毎年、定点観測しているものもあれば、スポットの調査もあります。
中には統計のとり方が現状の就活時期と合っていないものなどもあります。


質問の聞き方によっては明らかに答えが誘導されるものもあります。


例えば、ある就職情報会社の学生意識調査などでは「中堅・中小企業も視野に入れますか?」という設問がありましたが、この聞き方なら意見が誘導される可能性があります。
もっとも、統計リテラシーがある人なら、この設問をみて気づくわけなのですけど。
でも、メディア報道では「学生は中堅・中小企業志向へ」などの見出しが踊るわけです。


特に内定率、就職率というデータには注意ですね。
調査主体によっては、調査時期が後になればなるほど、「就職希望者」が進学や就職留年に鞍替えしたという理由でカウントしない、フリーターになった人は「就職希望者じゃなかった」などとしやはりカウントしないなどのことが起こっています。


そこでデータが「正しい」「怪しい」という議論になるわけなのですけど、皆さんには単にそういう2元論をこえてもらいたいと思っています。
つまり、「その調べ方ではそうなった」ということを「味わって」もらいたいのです。
もちろん、中には本当にいい加減な調査もあるわけですが。


ちなみに、統計ネタの本として、皆さんが学ぶ第一歩として『統計でウソをつく法』(講談社 ブルーバックス ダレル・ハフ 著, 高木 秀玄 翻訳 )を読んでもらいたいです。
いまや、古典ですが。


統計リテラシーは就活に限らず、皆さんの今後の人生にきっと役立つはずです。
ぜひ、身につけておきましょう。




さて、あなたの大学の就活はどうなっていますか?




ところで...。
メディア報道される就職実績について、実感がわかないことがあることでしょう。


そう、あれはあくまで世の中全体のデータなのです。
いや、世の中全体と言いつつも、その中での偏りもあるわけですが。


皆さんの大学はどうなっているでしょう?
確認してみましょう。


キャリアセンターが外向けに発表している進路データもありますが、それも参照しつつ、やはり学内のデータをあらうといいですね。


外向けに発表するデータは、内定先社名などに数年前のものを混ぜていたりするわけですよ。
まぁ、これも年によって求人の波はあるわけで数年分を表記した方が現実感がわくという考え方もありますが。
そして、前述したような内定率工作が行われている可能性があります。


データの件に限らず、仲のよいキャリアセンタースタッフがいるといいですよねぇ。
まぁ、それでも刺激的すぎるデータは学生の間でひとり歩きするリスクがあるので内緒にすることもありますが。


まずは自分の大学の就活がどうなっているのかを把握しましょう。
世の中に出ているデータや、他の大学などとも比較し、現状を把握しましょう。


もちろん、全体のデータとあなた個人の事例は異なります。
悲観も楽観もせず、前に進みましょうね。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。