「求める人物像」を鵜呑みにするな!一歩先を予測しよう

2011.9. 1  3612Views

こんにちは、常見陽平です。




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求める人物像を気にして、どうするのだろう?


最初に言っておきます。


私は「求める人物像」という言葉が嫌いです。


トラウマ体験があるんです。
大企業で一社員としてOB訪問を受けたときも、採用担当者をやっていたときも、学生はやたらと「求める人物像はどんな人材ですか?」という質問をしてくるのです。


気持ちはよくわかります。


誰でも内定は欲しいわけですよ。


先日も、大学3年生2人と大学教授にヒアリングを受けた際には、「いま、企業が求めている人材はどんな人材ですか?」と質問されました。
この質問をされ始めてから十数年になるわけですが...。


「それを知ってどうなるんだろう?」という素朴な疑問が湧いてきたのでした。


いや、もちろんその企業のことを知るためにも、入社するためにも「求める人物像」を知ることは大事なのですけど、では、それを知った後でどうしますか?


そうなるべく変わろう、成長しようと頑張る人もいますが、いつも見てきて痛いな、かわいそうだと思うのは、「自分はあなたの求める人物像ですよ」と演技しようとして、メッキが剥がれてバレバレな人です。


よくあるパターンは「コミュニケーション能力抜群です」と自分から言う人です。


あの...。会話していたらだいたいわかりますよ。
棒読みでそう言われても意味がありません...。


そして、企業の言う「求める人物像」、これまた色々あります。




企業の言う「求める人物像」は機能しているか?


企業は採用情報コーナーなどで「求める人物像」を掲げています。


チャレンジ精神、成長意欲、コミュニケーション能力など、お馴染みの言葉が並びます。
学生向けに打ち出す言葉の他に、募集上のキーワード設定や、選考時に特に重視する能力、それを判断する方法などをデザインしていきます。


ここのレベル感なのですが、企業によって実にバラバラなんですよね...。
明確な言葉、その企業らしい言葉で定義している企業もありますが。


定義したところ、選考を担当する現場の面接官に浸透していないことも。


そもそも、どの企業も同じようなことを言っています。
だからこそ、その企業らしさを味わうことが大事なのですど。




これから必要な人物とは何か?一歩先を予測する、変化する


私は、「求める人物像」欄はそのまま鵜呑みにしてはいけないと思っています。


ヒントは、その言葉を踏まえたうえで、じゃあその企業で今、活躍している社員はどんな力をもったどんなタイプの人なのかを考えるのが大事です。


また、そこに合わせて成長するという考え方もありますが、致命的に合わない場合は、やはりその企業には縁がないのかな、と。


もう一つの視点でこれから求められる人物像はどんな人なのか、自分が社長や人事部長だったらどんな人が必要かを考えるのも手です。


一方、どの企業の人事も「これからは○○なタイプが欲しい」なんてことを言います。


○○にはイノベーティブ、起業家タイプ、グローバル志向なんて言葉がはいります。
組織は戦略に従うわけなので、今後の展開を考えてそのような採用をすることが大事な人事戦略であることも言うまでもありません。


ただし、そういう人がなかなか受けてくれないことで企業は困っていますし、なかなか定着しないんですよねぇ。


イノベーターとして期待して入社したものの、古い上司・先輩に抑圧され、フルボッコにされる人も。
あるいは呆れてやめる人も。悩ましいです。


一つ、明確な答えがあります。


それは少し先の未来を考えること、どうやったら自分を高く売れるかを考えること、周りと同じことをしないことです。


社会の中で、企業の中で、今後はどんな自分に成長すれば、あるいはポジションを担えば一番活躍できるのか。
これを考えることでしょう。


企業の求める人物像に合わせようとしたところで内定するわけではありません。
ましてや、気付けば社会からも会社からも必要のない人材になっていることも。


混迷の世の中を飄々と生き抜く、変化に対応できる力、しなやかさ、自分のポジショニングを考えましょう。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。