どうなるソー活?(2) 残念なソー活、でもブレイクする理由

2011.6.30  1583Views

こんにちは、常見陽平です。


前回の「どーなるソー活?(1) 達人学生と残念な企業たち」に引き続き、
ソー活の現状と今後について書いていきます。




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 残念なソー活
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一方、何事も何か新しいことを始めるときには混乱を伴うものなのですが・・・。
ソー活の様子を見ていると学生側も企業側も大変残念だなと感じる瞬間は多々あります。
 
まず、学生側ですが、あまりにも「セルフブランディングwww」に気を使いすぎて、
かなり誇張したプロフィールを作り込んでいる人が。
会ったときのギャップ、大きすぎです。


また、人脈を増やしすぎて収拾が付かなくなっている人も。




さらには、ソーシャルメディア上での発言が鼻につく感じで、
セルフブランディングがバレバレの人もいれば、あまりにも考えていなくて炎上を誘発するケースも。


そういえば、某大学の某社内定者がTwitter上での発言で大炎上という事件もありましたね...。
Ustreamを活用したイベントなどでも、タイムライン上の質問が、あまりにも考えておらず、
バカを可視化している状態になっているとも言えます。
 


企業側においても、まず今の段階のFacebookページはとりあえずナビサイトの情報や、
ホームページの採用情報をそのまま持ってきましたというレベルのものも多数です。


かなりの数のFacebookページを徘徊したのですが、
中には、まるで田舎のキャバクラのホームページのような場末感がプンプンしたページもありますね。
 
ディスカッションコーナーなども立ち上げているのですが、
いちいち採用担当者がウェブ上での発言の流儀を分かっておらず、
一方で学生もアピールしようと必死で書き込みをしてきて、
「この輪に入りたくない・・・」という空気を醸し出していることも。


ちなみに、笑顔をやたらと強調する人事担当者の写真からも嘘臭さがプンプンしています。


これ、広告の塊であり、よい情報中心に載せるナビサイトとあまり変わらないじゃないですか。
ソーシャルメディアならではの良さが伝わっていないことも。
 


さらに、残酷なのは「いいね」ボタンです。
申し訳ないですけど、ほぼ、もともとの企業の知名度に比例するんですよね。


いいねが20程度で、しかも中身をみるとほとんど人材ビジネス業界関係者ということも。
さらには、ソー活ナビさんからの売り込みコメントが書きこまれたままで、
盛り上がっていないことバレバレで痛いことも。
まぁ、イイネの数が多ければいいというわけではないのですけれど。
 
Twitterにしてもそうで、結構な有名企業でもフォロワー数が伸びず、
2012年度ではTwitterの利用をやめてしまった大企業も知っています。
 
企業の方に聞いてみても、ソー活系のイベントに行ったがほしい学生は居なかった、
ナビ採用の弊害はよくないと思っているが、ソーシャルメディアが最適だとも思えないという声を聞きます。
また、ソーシャルメディアで採用に成功したと豪語している企業も、
よくよく聞くともともと接点があった学生だったり、ITに強い学生中心だったりします。




逆にソーシャルメディアで取れない層だっています。


体育会の主将をソーシャルメディアで採用したなんて話は聞いたことがありません。
 
現状に関しては企業も学生も痛いなと言わざるを得ません。
まぁ、いまだに「ソー活って何?」という学生や人事が多いこともまた事実なんですけど。
 


ふと、ウェブ2.0という言葉が流行り始めた頃のことを思い出しました。
当時も学生も企業の人も
「これからはウェブ2.0ですな、がはは」
「ウェブ2.0が僕たちを幸せにするぞ、ぐふふ」
と言われていたことを思い出します。


果たしてこれは広がったでしょうか?


ある意味、広がり、ある意味、広がりませんでした。


要するにリスクを恐れる企業、困っていない企業は別に活用しなくても大丈夫だったからです。
個人も、そこで積極的に発信する層(これも有益な発信をする人とそうでない人に分かれますが)
とそうでない層に分かれていましたよね。
 
今回のソーシャルメディアに対する盛り上がりをみていても、私は既視感を覚えるのです。






 それでも、ソー活がそこそこブレイクする理由
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ただ、それでもソー活はそこそこブレイクします。
その理由は、実は先日も紹介した経団連の倫理憲章改訂にあります。


12月に採用広報活動スタートとなる今回の改訂については、
大学・企業関係者に会うたびにみんな実は怒り爆発中です。


でも、就職情報会社もこれに合わせてナビサイトのオープン時期を変えるので、
経団連企業以外もこれに合わせた採用活動を行う企業が増えます。
 
そんな中、実は企業と大学が水面下で力を入れようとしているのが、OB・OG訪問です。


企業の人事からの会社説明はNGでも、OB・OGと1対1で話すならOKというわけです。
実際、企業も大学もOB・OGとの交流会に力を入れる動きはありますし、実際、もうとっくに行われています。


この、OB・OG訪問のエンジンとしてソーシャルメディアがブレイクするでしょう。
ただ、首都圏の上位校中心ではあるかと思いますが。


企業側でもFacebookページなどを使って、OB・OGとの接点がもてる企画を仕掛けることでしょう。
また、ナビサイトや、採用活動の応募者管理DBなどにおいても
一部の企業ではソーシャルメディアとの連動が噂をされています。


どのレベルで行うのかは、今後に注目です。
そして、ソーシャルメディアに力をいれていた企業を中心に、ユニークな仕掛けは多数登場しそうな予感です。


まぁ、「とりあえず」というレベルで採用のためのFacebookページを立ち上げる企業は増えそうですね。
あくまで、ホームページをそのまま持ってきましたというレベルも含めてですけど。
 
問われるのは学生と企業のそれぞれの姿勢ですね。


さらけ出す勇気がある学生と企業ではどんどん使われ方が洗練されていくでしょう。
そうじゃない企業は相変わらずです。


もっとも、ソーシャルメディアはあらゆるものを可視化していくので、
そこに日本の学生と企業がどう向き合うかが注目されます。


 
まぁ、この手のメディアが出るたびに「これからは○○だ」とか「変わらなきゃ」という話になるのですが、
過去に変わったこと、変わらなかったことにも学びつつ、
それぞれどう変わるか、変わらないかを考えたいところです。


ソーシャルメディアのマナーくらいはまずマスターしたいところですけどね。
(マナーに関してはこの記事をご参考ください:「就活中、ソーシャルメディアで気を付けたい3つのポイント」)






まだまだ書きたいことがありますが、後日、このコラムか講演などで紹介することにしますね。
お楽しみに。

執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。