「いつかは起業したい」というアナタは、たいてい起業しません

2011.2. 3  4670Views

こんにちは、常見陽平です。


今回は「起業志向」の方のお話です。
私の友人にはベンチャー企業の経営者が多数います。
人材ビジネス、IT系、マーケティング、コンサルティングなどから、入れ歯の接着剤(!)、
飲食店、輸入雑貨、出版、エステなど業種は実に様々です。


ある友人経営者のもとに、「将来は起業したいので話を聞かせて欲しい」という
慶応義塾大学の学生がやってきました。
「起業するためにはビジネスが分からなくてはならないので、
外資系コンサルティング会社に入り修行したいんです」とその学生は言います。


すると、彼はこう言いました。


「君は起業というものを全くわかっていない。コンサルタントと経営者は違うんだよ」


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経営者に求められるものとは...






もちろん、コンサルタント出身の経営者は多数います。
例えば、ディー・エヌ・エーの南場さんや、オイシックスの高島さんはマッキンゼー出身ですね。


ただ、コンサルティングの仕事はあくまで「企業参謀」であり、「経営者」とイコールではありません。
シリコンバレーのベンチャーキャピタルの出資基準は
「ビジネスモデルが優れているか」と「経営者の人柄、資質」をみます。
単に経営を理解しているかだけでなく、ビジネスを構築できるか、
そして戦略を立案し、それを実行できるかが問われます。
ヒト、モノ、カネ、情報をマネジメントする力が求められます。


要するに「頭がいい」だけではダメなのです。
コンサルタントで起業できた人にはそんな力が備わっていたのでしょう。




あなたは本当に起業家に向いてますか




「いつかは起業したい」という学生と毎年のように会います。


実は約15年前、就活中だった私もそうでした。


教授にお願いして、ベンチャーキャピタルの社長にアポを取り、
ベンチャー支援とは何かや出資の基準を聞きました。
リクルートに入社したのも、「いつかは起業したい」という想いがあったからです。


しかし、私は起業家にはまったく向いていないことを悟りました。
ビジネスの構想力と、戦略立案、マネジメント力、ファイナンスの知識がまったくダメなのです。
よく私は、起業家だと勘違いされるのですが、株式会社クオリティ・オブ・ライフに働くサラリーマンですし、
弊社の株は一株も持っていません。


そして、約14年の社会人生活を通じて、
自分は組織の上に立つ人間には決して向いていないことに気づきましたし、
自分の強みは現場視点で企画をつくり、実行することだと気づいたのです。




「いつかは起業したい」では起業しない






自分が会ってきた人で「いつかは起業したい」という人で起業した人はほぼいません。


起業した人は「いつ」というのを明確に定めていた人か、
いつの間にかそうなっていた人、やりたいことが既存の企業を超えた人、
今まで世の中になかったことをやりたいので起業せざるを得なかった人なのですね。


そして、本当に起業する人は「起業するかどうか迷っている」というかたちではなく、
「起業したのだけど、採用について教えてくれ」と相談してきます


さて、起業家志向の学生諸君。
あなたは本当に起業したいと思っていますか?


いくら起業家と会っても、コンサルティング会社やベンチャー企業に入っても、
実は起業につながっていないかもしれませんよ。


自分に起業する力があるのか、必要なのは何で、何が足りないか。


若さという資源も黙っていても失われていきます。


「経験を積んで40代に起業」といいますが、
その経験、もっと早く積むこともできるかもしれません。






ここに答えはありません。ぜひ、考えてみてください。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。