インターン搾取に喝!学生よ、今から搾取リテラシーを身につけなさい

2011.8.17  5847Views

こんにちは。常見陽平です。




今日も繰り返される、インターン搾取




元切込隊長、やまもといちろう氏のブログを愛読しています。数日前、こんなエントリーがありました。


「インターンを無償のバイトで"使える学生選別の機会"と思ってる馬鹿ベンチャーの経営者ちょっとこい」(やまもといちろうBLOG)


はい、よくぞ言ってくれたという感じですね。
雇用のカリスマ、濱口桂一郎先生の「hamachanブログ」でも紹介されていました。


私が採用担当者になった2006年頃から、「インターン搾取」が話題になっていました。
ベンチャー企業を中心に、無償あるいはそれに近い状態で「インターン」という名目で学生をこき使うという...。


学生も、その企業の社長に心酔していたり、企業のことがよく分からない状態でその仕事がすごいものだと感じて頑張っている自分に酔ってしまったり、あわよくばその企業に入れるのではと思ったり、エントリーシートにかけるスゴイ体験が欲しくてハマっていたり...。


もうすぐ辞任することが確定的な菅直人首相は「一に雇用、二に雇用」と言い、実際にはほとんど成果を上げられなかったわけですが、庶民のホンネを言うならば「一に雇用不安、二に雇用不安」なのではないでしょうか。
だから、このようなインターン搾取にあってしまうのではないかと考えています。
国も企業も大学も、基本的にインターン推しの流れです。
以前のエントリーでも書きましたが、本当に仕事体験と言えるのかだとか、どこまで選考に関係あるのか不透明だとか、色々あるものの、社会を覗く体験としては悪くないと考えます。
ただ、それを悪用したインターン搾取については、みんなもっと気づくべきですし、怒るべきではないでしょうか。


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改めて、社会、企業、社会人の現実を知るということ




インターン搾取に合ってしまう原因としては上記のような、就職難、新卒の就活に限らない雇用不安がありますが、永遠の課題ではあるものの、社会、企業、社会人の現実を学生が知らなすぎるということがあるでしょう。
現実を知らないが故に、鳥が最初に見た動くものを親だと信じてしまうこと同様に、初めて見た企業や社会人が素晴らしく見えてしまうものです。


特にベンチャー企業の経営者がそうですね。


拙著『「キャリアアップ」のバカヤロー』(講談社+α新書)にも書きましたが...。
ベンチャー企業も、その経営者もピンきりですよ。
私が就活をしていた十数年前も今も、就活は大企業対ベンチャー企業という大きなくくりで論じられがちです。


そして、ベンチャー企業はやたらと美化されます。
これからはベンチャーだとか、大企業じゃもうダメだという。
気持ちはわかりますが、問題はそう簡単じゃないのではないか、と。
そして、そんな文脈で美化されるベンチャー企業とその経営者は得をしているなと感じたりします。


世の中には、優れたビジネスモデルの企業、素晴らしいビジョンを掲げた企業、有能な経営者は皆さんが思うよりもずっとずっと存在します。


眼の前のものに惑わされないように...。
そのためにも、社会の現実を知る機会をもっと増やしてもらいたいのです。




働く=食べるためにするもの、というベーシックな原則も忘れずに




「どうせやるなら楽しいことをしたい」
「お金よりもやりがいが大事」


と、いつの時代も若者は言います。
自分もそういうタイプでしたし、そうじゃないとエンタメ企業に転職したり、今のようにベンチャー企業で働いたりしないわけですけど、実体験を込めていいますが、世の中そんなに甘くないですよ。


そして、気付けばやりがい搾取に合っているということも...。
働く理由は教科書的には、食べていくためと喜びのためです。
新卒採用の現場では、企業も後者を打ち出し、学生もそれを意識する傾向がありますが、食べていくためというベーシックな理由にもっと目覚めるべきだと考えます。


そして、上記のようなベンチャー企業のやりがい搾取について「おかしい!」と気づきましょうよ、そろそろ。
周りの友人にそんな人がいたら、ぜひ、ツッコミを入れてあげてください。


これくらいのことに気づかなければ、一生やりがい搾取されて終わりますよ、えぇ。


あと、何度も書いていることですが、就活のためだけにスゴイことをするのをそろそろやめましょうよ。


「自分は意識高い学生だwww」とアピールするために、ベンチャーでインターンしたところで、それはもう、みんながやっていることで、実にありふれていますよ。




就活のためではなく、人生のために学生生活をどうするか、一度冷静に考えてみましょう。


執筆者プロフィール

常見陽平

常見陽平

評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、クオリティ・オブ・ライフ(現在:フェロー)を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。
2015年4月 千葉商科大学に新設された国際教養学部の専任講師に就任。
著書多数。