業界研究:金融業界編(生命保険)

2011.1.13  27182Views

こんにちは、編集部スタッフです。


今回は金融業界の中でも生命保険業界について説明していきます。

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生命保険とは?


生命保険とは、人の命や傷病に関わる損失を保障する保険で、
死亡や疾病などの所定の条件において、保険者が受取人に保険金を支払うことを約束するものです。

みなさんのご家族で加入している方も多いのではないでしょうか。


相互会社という形態


日本の生命保険会社は特殊な形態を取っているケースがあります。
その一つが「相互会社」というもの。
相互会社とは、株式会社とは違い、株主が存在せず、
保険契約者一人一人が会社の構成員とするもの形態のことを指します。
日本では相互会社の形態をとる生命保険会社が多かったのですが、
経営を監視する総代が取締役会からの選定になるため、
監視機能が働いているのか疑問に思われるところもあり、また資金繰りの悪化から、
近年では相互会社が株式会社化し、市場からの資金調達を目指すするケースも増えています。

現在残っている相互会社は、日本生命、住友生命、明治生命、富国生命、朝日生命の5社のみです。


最近の動き


◆第三分野保険の台頭

近年の動きとしては、第三分野保険の台頭があげられます。
第三分野とは、医療保険のことで、がん保険や介護保険などのことで、
第一分野は死亡保険や年金保険など、主に生存又は死亡に関する保険を指し、
第二分野は損害保険(火災・自動車など)を指します。
医療保険はよくCMで見るケースも多いのではないでしょうか。

第三分野を足がかりに、外資系保険会社が参入してきました。
日本で昔から販売されていた第一分野の死亡保険は市場でほぼ加入しつくされていたため、
日本の保険会社各社も同様に参入し、加入合戦となりました。

◆営業人員の強化

2005年頃に発生した各社の保険金不払い問題を発端に、
それまでの保険の販売方法を見直そうという動きが各社で起きました。
昔から、日本の生命保険者会社は、生保レディと呼ばれる女性を営業のメインにすえ、
いわゆる"義理・人情・プレゼント"で保険に加入する手法を取っていました。
そのため、自分が何の保険に加入しているか分からない...という方も多いようです。

しかし、外資系生保会社は違い、個人に対してライフプランを考え、
最適な保険プランを提示するコンサルティングセールスをメインとしており、
女性だけではなく男性もライフプランナーとして従事していました。
(アメリカではライフプランナーの地位は社会的にも高く、高い倫理観を求められる仕事とされています)

その流れから、伝統的な営業手法(生保レディ)に頼ってきた日本の生命保険各社も、
人情で売るのではなく、しっかりとコンサルティングを行う営業スタイルに変更しようと、
営業人員の教育・強化を行っています。


◆販売チャネルの変化

よく「アリコの生命保険」のCMを見るかもしれませんが、
個々の営業マンから直接保険加入するだけではなく、
CMを見て電話で申し込む方法など、様々な販売チャネルが増えてきています。

販売代理店などを通しての販売などの他に、
2007年には銀行の窓口で生命保険の販売が解禁となり、
またネットでの販売も増えるなど、多種多様な販売方法となってきています。

最近ではネット専業の生命保険会社(ライフネット生命保険など)もあり、
人件費がかからず保険料をより安く提供できるため、人気が出てきています。


機関投資家としての保険会社


預かった保険金を長期的に運用し、その収益を得て更に資産を増やしていく機関投資家でもあります。
日本の生命保険会社は、金融機関全体の総資産の約1割を占め、
銀行に次ぐ第2位規模の金融機関です。

例えば、業界大手の日本生命は総資産が48兆円もあります。



保険会社の指標とは


保険会社を選ぶ際の指標として、格付けとソルベンシーマージン比率があります。
格付けは、スタンダード&プアーズ、ムーディーズなどの格付け会社による調査により、
ランキングされたもので、各保険会社の財務力を分かりやすく指標として示しています。

スタンダード&プアーズ、ムーディーズの格付けデータ
ソルベンシーマージン比率

ソルベンシーマージン比率は、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる支払い余力を
どれだけ持っているかを判断するものです。
例えば、株の大暴落や震災など予測不可能なリスクでも支払うことが出来るか、という指標です。

数字が大きいほどよく、200%を切ると危険と判断され、行政監督当局の管理化に置かれることとなります。


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